植物生活編集部 植物生活編集部 2週間前

片瀬那奈さんのフラワーノート File.04「個性あふれるサボテンたちと寄せ植え体験」




種から芽が出て、茎が伸び、葉をつけ花開く。

植物の生長がそうであるように、花が人の手に届くまでの間にも
たくさんの過程を経て、その時々の育てられかた、扱われかたをされながら
花は季節の美しさを表してくれています。




花が大好きな人は、その過程すべてを見てみたくなってしまいます。

日々「美しさ」を求める人、人々に「楽しさ」をお伝えするプロが、
その花の流れを見てみたら。
どう感じてくれるのでしょうか。



そこで、この連載では、
花、植物の生産から人に届くまでの現場を、女優の片瀬那奈さんとともに巡ります。

数々のドラマやTV番組などマルチに活躍をする片瀬那奈さん。
前回は、コチョウランの産地を見に、神奈川県座間市の座間洋らんセンターに伺いました。

File.01 >> 「ラナンキュラスの生産地」青木園芸
File.02 >> 「コチョウランの生産地」座間洋らんセンター
File.03 >> 「植物が生き生きと育つ場所」フルヤプランツ



数ある植物の中でも形や佇まいがユニークで存在感のある植物といえば、サボテン。
砂漠に、ニョキっと育つウチワサボテンのイメージ。
近頃、注目されている植物のひとつでもあります。

女優の片瀬那奈さんと巡るフラワーノート。
これまで植物を育てる場所に足を運んできた片瀬那奈さんですが、今回は、はじめて植物を販売しているショップへ向かいました。


植物好きの片瀬さんが自宅で育てている植物の中でも、ひときわ愛着がある植物がサボテンだそうです。

そこで、今回伺ったのは千葉県長生郡一宮町にある「SABOTEN MISSILE(サボテンミサイル)」。
名前の通り、サボテンや多肉植物を専門に取り扱っているショップです。




片瀬さんを出迎えるのはオーナーの杉木康人さん。

土曜日、日曜日限定でオープンしているショップですが、平日はお庭の施工やメンテナンスなどを行なっています。

天井の高いガレージのようなショップには、もともとは別荘として使われていた場所。
広い店内には、アンティークの家具が置かれ、たくさんの植物や器が美しく並んでいます。

海の近くの素敵な倉庫のようなカジュアルな雰囲気ですが、杉木さんのセレクトによりかわいらしい雰囲気もあります。
 

植物との出合いから、サボテンの不思議な生態



片瀬さん(以下、片瀬):「サボテンがメインのお店なんですね?」
杉木さん(以下、杉木):「そうですね。部屋の中で見て楽しむ植物を扱うことで、スタートしました。店内で扱っているのは、サボテンやサーキュレントと呼ばれている多肉植物がメインになります。ただ、店は週末だけのオープンなので、それ以外の日はサボテンで庭を作ったり、取引先のショップの装飾を手がけたり、依頼によってはサボテン以外の植物を扱うこともあります」

片瀬:「どうして、千葉県の一宮にお店を構えようと思ったんですか」
杉木:「この場所だと冬でも暖房を入れずに、ショップで育てて大丈夫という環境だったので。実は、店を持った時点では、東京でサラリーマンもやっていて都内から週末に通っていたんです。なので、毎日見ることができなくても大丈夫な環境というのも理由ですね」

片瀬:「やっぱり、気候が合っているのでしょうか」
杉木:「寒くならないというのは大きいですし、都内よりも暖かいですから、合っています」
片瀬:「東京から通っていたということは、ここが出身地ではないんですね」
杉木:「千葉県出身ですが、ここから少し遠い鴨川市の出身で、進学してからは、東京近郊にいました。学生時代にお花屋さんでのアルバイトが、植物に携わるきっかけでした」

片瀬:「お花屋さんで働いていたのは意外ですが、切り花を扱っていたのですか」
杉木:「そうです。仕事が面白くて、植物に興味を持ったのですが、さらに、切り花を販売するよりも植物を育てて売る方に興味を持つようになってしまって、大学卒業後は造園などを行う施工会社に就職しました」

片瀬:「いつからお花屋さんで働いていたのですか」
杉木:「18歳から大学卒業まで4年間お花屋さんでアルバイトしました。造園に携わったあとに、お店を持つためにお金を貯めようと、広告代理店に転職してサラリーマンをやってから、独立しました」
片瀬:「夢を叶えるために頑張ったんですね」
杉木:「もともとはお店だけじゃなく生産もしたいなと考えていて、この場所を選びました」


店外には、大きめのサボテンが並んでいます。二つ並んだ大きな丸いサボテンは、金シャチ。


片瀬:「生産にも興味があったんですか」
杉木:「そうなんです。なかなか生産まで手が回らず、今はサボテン農家さんから仕入れています」
片瀬:「サボテンを生産する場合は、どのようなところから育てるものなんでしょうか」
杉木:「この金シャチは、タネから育てて、苗にして十数年育てたものです」
片瀬:「タネから、10年以上ってすごく長いですね。でもサボテンにタネがあることを知らなかった。挿し木で増やすものかと思っていました」

杉木:「その通りで、挿し木で増えるものが多いのですが、実はタネからしか増えないサボテンの種類もあるんです。サボテン農家さんの中にも、タネ、つまり実生(みしょう)から育てる専門の人もいて、その人たちが育てた苗を大きくする生産者もいて、仕入れて育てることもあります。今、ショップの中にちょうどタネがあるサボテンがありますよ!」



杉木:「この中の黒いがサボテンのタネです」
片瀬:「こんなに小さいのですね。これは上に浮き上がってくるのですか」



杉木:「このサボテンはメロカクタスというジャンルのサボテンで、上の方に花座という花が咲くラインが頭から出るんですよ。さっきのオレンジのようなものが、あと2〜3年でこのサボテンからも出てきます。ここから花が咲いて、自家受粉によりタネが取れるのです」

片瀬:「面白いですね。そして店内も珍しいサボテンがたくさんありますね」
杉木:「直接、生産者と取引しているので、普通の園芸店に出回らない種類も多いです」

片瀬:「サボテンの生産者の人たちは、それぞれ同じ種類を作っているのですか、それとも様々な種類を作っているのですか」
杉木:「色々ですね。生産者によって違います。絞って品種を限定してたり。それぞれ得意分野はありますね」


店内の植物の豊富さに魅了される片瀬さん。気になる植物を見つけては、杉木さんに質問します。


片瀬:「これは、サボテンですか?少し違うように思いますが」
杉木:「多肉植物ですね。一見して似ていますよね。刺座があるかないかとかの違いだったりします」
片瀬:「こうして色々なサボテンを見ると、みんな棘も色や趣きも違うんですね」
杉木:「一般的にサボテンと思えないような姿をしているサボテンもありますよね」
片瀬:「サボテンは、花も咲きますよね」
杉木:「おもに春か秋に咲くことが多いです。冬だとあまり咲かず、初夏でもたまに咲くことがありますよ」




片瀬さんの目に止まったのは、少し半透明な植物。


片瀬:「これはなんだか、不思議な感じですね」
杉木:「ハオルチアです。アフリカの乾燥したところに自生しているのですが、土の中に埋まっているんです。草食動物が水分を摂るために食べにきてしまうので、隠れているんですよ。国によっては食用もあるみたいですよ」

片瀬:「アロエみたいなのかな」
杉木:「そうです。鏡みたいに光を乱反射させて、効率よく光合成をしているのですよ」

 

自宅でのサボテンとうまく付き合うには


自宅でサボテンを育てている片瀬さんが気になるのは、家で上手にサボテンを育てるコツ。



片瀬:「サボテンは大きくなったら、鉢を替えた方がいいですか?」
杉木:「基本的に根が鉢の中にいっぱいになったら、植え替えた方がいいですね」
片瀬:「その目安とかはありますか」
杉木:「土の上に根が出たり、鉢底の穴から根が出てくるようだったりすると、根が鉢いっぱいに育ったという感じです。ただ、そのくらいになるまではほったらかしでもサボテンの場合は平気です」

片瀬:「あと、水やりなのですが、置く環境や季節にもよると思うのですが、平均的にはどのくらいあげるといいのですか」

杉木:「おっしゃる通り、個体差や環境の差はありますが、土が乾いたら水をあげるのが鉄則です。うちのお店のように、半日くらいは光が差して、昼夜の温度差が少ない場所だと月1回くらいの水やりで平気です」

片瀬:「水をあげすぎるとどうなりますか」
杉木:「根腐れなどで傷みます。水をあげすぎるよりは、乾燥気味のほうがサボテンや多肉植物にはいいんです」
片瀬:「あと、部屋で植物を育てると、風をあてたほうがいいと聞くのですが、ベランダなどに出して風に当てたほうがいいですか」

杉木:「置いている室内が蒸れるほどだと、外に置いたりしてもいいですが、基本的に人の動きがあったり、窓から空気を入れ替えたりしているところならば、わざわざ外に出したりする必要はありません。風の流れは植物にとっては大事ですが、サボテンは中に入れたり、外に出したりという変化が嫌いなんですよね。人間と同じで、引越しで疲れてしまうみたいな感じです」

片瀬:「それはサボテンにもストレスになるのですね」
杉木:「そうなんです。置いている場所の環境に慣れようとするものです」




杉木:「サボテンはたくましいところがあって、根腐れしてもきれいに掃除して乾燥させると、根が出てくるんですよ。これです」

片瀬:「すごいですね」
杉木:「この位の大きさだと1年くらい放置していても大丈夫。生産者のところで調子悪かったものをいただいてきました」

 

タネから苗まで3年





杉木:「これがタネから苗になった状態のサボテンです」
片瀬:「うわー、かわいいですね。これなんかイエティーみたい」
杉木:「南米の高山にいるエスポストアという種類のサボテンで、太陽の光が強すぎて毛を生やしていて、遮光して体を守っているんです。サボテンの形には、それぞれ、きちんと意味があるんです」



片瀬:「ここまで育つのに何年くらいかかるんですか」
杉木:「タネから3年ですね。外に置いてある金シャチの苗です」
片瀬:「3年ですか?」
杉木:「意外とかかるんです。現地だともう少し早いかもしれませんが、日本でもサボテンに合う環境で育てても2〜3年はかかります」

片瀬:「そんなに時間がかかるものなんですね。育てている現場を見る機会はなかなかないですから、こんなに小さな植物があれだけ大きくなるって、改めてすごいなと思いますね」
杉木:「生産者は手元で何十年もかけて育てますからね」
片瀬:「手放すときに泣いてしまいそう」
杉木:「それは、よくあることですが、生産者が売りたくないってなってしまうので、信頼関係を築いていないと、貴重なものは売ってもらえないこともあります」

片瀬:「昔に比べて、サボテンの注目度はあがっていますか」
杉木:「何回かブームが来ていますが、今は上り調子です」
片瀬:「生産も新しい人が増えているのでしょうか」
杉木:「農業大学を卒業したばかりの若い人が就農するケースもありますが、サボテン専門農家だと高齢化でやめている人も多くなっているようです」
片瀬:「この連載では、さまざまな品目を見にうかがっているのですが、どの品目も生産者が減っていると聞いているので、やっぱり難しいのですね。サボテンが好きじゃないと難しいですね」
杉木:「従来の価格だと、専門農家では厳しいかもしれません。ですが、新規ではじめた若い人たちは、今までの商売とは違うやり方を模索しているので、また変化はありそうです」


杉木さんはショップ名の「サボテンミサイル」で、動物のフィギュアとサボテンや多肉を使った寄せ植えの本を出版し、商品として卸売やワークショップなどを行なっています。
せっかくの機会なので、片瀬さんにも寄せ植えにチャレンジです。寄せ植えに使う植物はもちろん、動物のフィギュア、器も店内から選びます。





杉木:「まずは動物のフィギュアを選んでください。ドイツのメーカーが作っているフィギュアでリアルな雰囲気が面白いです」
片瀬:「わー、どれもかわいいですね」
杉木:「好きな動物はありますか」
片瀬:「このなかだと、ミーアキャットかな。実は、ミニチュア好きなので、すごい嬉しいです。小さな世界が好きなんです」





杉木:「次は器選びですね。ミーアキャットはアフリカの動物だから、アフリカンな器もおもしろいかもしれませんね。大きい器だとミニチュア8種類くらい、小さい器だと4〜5種類の植物が入るので、植物の量で器の大きさを決めてもいいかもしれません」
片瀬:「じゃあ賑やかな方にしようかな。アフリカンな器に決めます」





杉木:「植物選びは自由なのですが、後ろに背が高い植物を配置して、手前に低い植物を入れるときれいですね。あと、いろいろな樹形を混ぜると、全体にまとまりが出るだけでなく、立体感が出ますよ」
片瀬:「どのくらいの量がいいですか」
杉木:「7〜8種くらいですね。あと中心となる植物を決めて、それ以外はフィギュアを置いてから、配置や種類を考えてもいいと思いますよ」



フィギュア、器、植物選びが済んだので、早速寄せ植え教室のスタートです。

杉木:「器の底に穴が空いていないタイプなので、ゼオライトを入れます。鉢の中の雑菌を吸収分解してくれる石をまず、入れます。これを入れると根腐れがしません」
片瀬:「鉢の穴が空いていなくてもいいのですか」
杉木:「サボテンの場合は土が乾いたら水をあげるようにすれば、大丈夫ですよ。ゼオライトの次は、土を器の8分目まで入れてください。この土は多肉植物用の土で、うちのオリジナルブレンドです。7種類くらい入れています」



片瀬:「土のブレンドはご自身で考えたのですか」
杉木:「最初は色々と市販品を試して、10年くらい前に名著と言われる育て方の本をいくつか見て、ブレンドしてみました。ただ、どうも水はけが良すぎたり、うまくいかなかったりもあって、今は自分でブレンドしています」
片瀬:「すごい、研究熱心ですね」
杉木:「全体のイメージが片瀬さんの中で沸いていると思うので、最初は大きな植物を植えてから、配置していくといいですよ。バークチップと言われる杉の皮なども入れると、山みたいな雰囲気になるので、風景らしくなります」






片瀬:「できました!」
杉木:「いいですね。あと、今の段階だと意外と土の中に空間があるので、一個ずつ植物を固定しながら、隙間に土を足していきますね」
片瀬:「え、そんなに土が入るんですね。びっくり」



杉木:「できましたね。土を追加したので、ばっちりです」




杉木:「じゃあ砂を選んで、最後の仕上げをしましょう。背景の周りだけ入れて、普通の土で仕上げてもいいかもしれません。砂は黒とか白とかだと締まった感じになりますよ」

片瀬:「砂は置く感じでいいですか」
杉木:「砂は2種類使って、二層にしても面白いですし、1種類だとまとまり感が出ます」




片瀬:「完成しました!かわいい!」
杉木:「下に固まる土を敷いてもらったので、水をしっかりあげましょう。そうするとさらに固定できます。今は表面を固まらせるために水をあげただけなので、多くはないのですが、実際に水やりするときは300mlくらいたっぷりあげてください。その代わり、月に1、2回あげれば十分です」



大好きなサボテンに囲まれ、はじめての寄せ植えも大満足の片瀬さん。今日の感想を伺いました。




片瀬:「ずっと行きたいと思っていた、サボテンのある場所だったので、とても楽しかったです。サボテンの奥深さを感じました。そしてやはり、愛情の深さを感じました。種から苗になるまで3年、苗から大きく育つまで10年とか長い期間、生産者さんの愛情を受けてきたサボテンを扱うというのは、なかなか大変ですし、それを伝えようとする杉木さんの姿勢も素晴らしいですね。はじめての寄せ植えも本格的で、楽しかったです」


次回のフラワーノートもお楽しみに。

スタイリスト/kozue onuma(eleven.) 
ヘア&メイク/Shinichi Omoshita
撮影/岡本譲治
生産地コーディネート・文/櫻井純子(Flow) 


衣装協力/
Tシャツ¥27,000 スカート¥67,000ともに/MSGM(アオイ) ピアス¥7,000/アビステ

[ 問い合わせ先 ] 
アオイ
TEL:03-3239-0341東京都千代田区九段南2-3-14靖国九段南ビル1階
アビステ
TEL:03-3401-7124東京都港区南青山3-18-17エイジービル



うかがった生産者
Saboten Missile サボテンミサイル
千葉県長生郡一宮町一宮358-2
土日のみ営業(不定休業日あり)
https://www.saboten-missile.com



訪問した人
片瀬那奈 Nana Katase
1981年11月7日生まれ。東京都出身。
instagram@nana_katase

出演情報:
『シューイチ』( NTV系・日曜7:30 - 9:55 )ほか、ドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK総合・金曜22:00~22:49)に出演。



公式LINE@登録で、植物生活オリジナルのスマホ用壁紙をプレゼント!
  • すてき 0
  • クリップ
  • 埋め込み

この記事をシェアするには埋め込みコードをコピーしてSNSやブログに貼り付けてください。

この記事のライター

植物生活編集部
植物生活編集部

「植物生活」とは花や植物を中心とした情報をお届けするメディアです。 「NOTHING BUT FLOWERS」をコンセプトに専門的な花や植物の育てかた、飾り方、フラワーアート情報、園芸情報、アレンジメント、おすすめ花屋さん情報などを発信します。

直近の記事

関連記事