植物生活編集部 植物生活編集部 2020/10/16

花店インタビュー|自宅アトリエの理由、だからこそできること|hurrah



外見は築30年のごく普通の一軒家。扉を開けると玄関から2階に続く壁面にリースやお正月飾りといったさまざまな作品が飾られる光景が飛び込んできます。6匹の猫が気ままに移動するこの自宅の一部が、「フレイ」のレッスンスペースとアトリエです。自宅アトリエだからできること、今後の展望とは。
 

勤務していた花店の閉店、そして独立して自宅アトリエ開業


オーナーの上山治栄さんが結婚を機に、17年ほど前に移り住んだ奈良県香芝市の一軒家がフラワーアトリエ「フレイ」です。自宅の一部をアトリエとして活用しています。

屋号の「フレイ」は英語の「hurrah」から。

応援のエールとして馴染みのあるこの言葉には「私の作り出す花たちで'hurrah'を贈るちょっとしたお手伝いができますように」という気持ちが込められています。



アトリエを開業する前、上山さんは、奈良県北葛城郡にあった花店「ビーファイブテン ローズ ハル」で店長を務めていました。花店で働く前には、なにわ花市場にも卸している平群温室バラ組合に3年ほど勤務。きっかけはかつて体調を崩していた時期に入院先で奈良市にある霊山寺のバラ庭園の話を聞き行ってみたところ、バラの美しさに心を奪われたことでした。

撰花、箱詰めの仕事はハードな毎日でしたが「触れただけで花の状態がわかるようになるなど見る目が養われる経験となりました」と上山さんは語ります。

勤めていたローズ ハルは2015年に惜しまれつつも閉店し、上山さんはそのタイミングで独立。同じ時期に自宅のリフォームも重なりモロッコなどの海外の要素がセンスよく取り入れられた現在の姿に生まれ変わりました。





 

自宅アトリエのいいところ


独立を考えたとき、なぜ店舗を構えず自宅アトリエに? その答えはコストと時間にありました。

店舗を持つと固定費がかかるうえに、店という場所に長い時間束縛されてしまいます。以前、店で働いていた8年間は、週に一度の休みがあったとはいえその休日もなにかと所用で家にいることはほとんどなく、帰るのは食事と寝るためだけ。自宅として購入した中古の一軒家がもったいないと感じていました。これらの理由から独立を考えたとき自宅アトリエという選択に至りました。

アトリエは予約制。そのためすぐに花が欲しい人への即時対応は難しいですが、その分、予約のお客さんに柔軟に応じることができます。

「早朝やお仕事帰りで遅くなられる方に、ご予約いただいていたお花をお渡しできるのはメリットです。空き時間で家事もできますし 笑」。と上山さん。

住宅地という立地柄、仕事帰りの男性から結婚記念日や奥さまのお誕生日の花の注文も多いそうです。



仕事のうえでも、暮らしのうえでも時間のコントロールができるようになったのは、自宅アトリエならではの大きなメリットかもしれません。

今後の展開については「花屋とカフェ併設のこじんまりしたビジネスホテルって面白そうだと思ってるんですがお金がないんです。笑」。

 

マルシェや催事などのイベントにも、積極的に参加


アトリエの運営も行いながら、上山さんは外にも精力的に飛び出しています。

大阪の百貨店での蚤の市やイベントや京都でのヴィンテージマーケット、兵庫、奈良など関西圏をメインにさまざまな催しに参加。そのためになにか営業をかけたりしているのかを伺ったところとくになにもしておらず基本的には声をかけてもらって、とのこと。

たとえば、日本やイギリスの古い家具や道具、食器など扱う方々からの声がけで古いガラスや鍋などに合わせて花をあしらったことがありました。

それは元々同じ地域で商売をしていた日本の古家具・古道具を扱う店のご夫婦からのご縁で。夏場などの時間に余裕がある時期は時折、出店の手伝いなどをしたりしていた仲で、そのご夫婦からイギリスの古物を扱う方へとつながっていきました。

「家具やカトラリーなど、お花と合わせると相乗効果が出て、空間がますます生き生きとし出します。ただ花束やリースを作るだけではなくその食器や家具がある場所で最大に美しく見えるのはどうすればいいのかと今現在、いろいろ勉強している最中です」。

上山さんの人柄に加えてこうした仕事への前向きな姿が、よい縁がつながっていく所以だと感じます。




集客元はSNSと届けた花

店舗を持たず、自宅アトリエで予約制となると、通りがかりの客層はあまり見込めません。いかに集客するか。

イベントがあるときなどはフライヤーを配布したりもしていますが、最近はインスタグラムからの新規の問い合わせが多いそうです。

インスタグラムでは参加するイベントについて、商品注文の詳細以外に、ふとしたつぶやきや飼い猫と植物のかわいい姿なんかもポストされていて情報だけでなくフレイの空気感も伝わってきます。

そのほか、花を受け取った方からの注文があったり、イベントが名刺代わりとなって知名度が広がっていったり……また、アトリエとなった今でも以前の店から続いて利用してくださるお客様も多いそうです。

 

商品を少し、見せていただきました!


自然の植生を想わせるアレンジ



あちこちに生えているグリーンの間から花が覗いているような自然に生えている雰囲気を意識した作品。

意外と長持ちするので夏のさっぱり、爽やかな感じがゆっくり楽しめます。普段からアレンジの注文が多く、こだわりのある店がオープンする際にはこのようなアレンジメントを贈ることも。参考販売価格:5,000円(器代別)。


飾ることで空間の見え方が変わる



長さ70cm弱のスワッグ。

弱々しい印象を持たせないように花材を飛び出させず、垂れることなく束ねてまっすぐなフォルムに。縦のラインが飾った部屋をすっきり見せるデザイン。花材は時には山に入って自分で採ってくることもあるそう。スワッグは通年で人気の商品です。参考販売価格4,000円。


深みのある色合いをかわいらしい一束に



アンティーク、シャビー感といった渋さが好きだと言う上山さん。こちらは深みのある色が加わった渋さを感じる印象にまとめた花束です。ベニクジャクアワのヒゲ、キョウカノコなどさり気なく赤い色がリンク。少しゆらいでいるような葉がポイントです。女性にプレゼントするのにぴったり。



以前、フレイを取材させていただいたのは2016年のことでした。

今回2020年になっての再取材にあたって大きく変わったことを尋ねたところ「とくに変わったことはないのですが、飼い猫が4匹から6匹になりました」。

この答えになんだか心が温かくなるようで花のセンスも相まって、フレイのファンになるお客様の気持ちが分かる気がします。


新型コロナの影響もあり、注意を払いながらのイベント参加も不安がなかった訳ではありませんでしたが、結果的に多くの来場者が訪れその楽しそうな様子を見ていると「誰かがときめくモノづくりや販売ってやっぱり楽しいものだと思いました。来年はこのコロナが落ち着いていることを祈り、地道に一つひとつのご注文を丁寧にこなしていくのが日々の目標です」。


text&photo 月刊フローリスト 撮影/タケダトオル


店舗情報
hurrah フレイ
奈良県香芝市西真美
※アポイント制につき、事前に問い合わせを。
http://www.hurrah-hurrah.com/
Facebook:@hurrah2017
Instagram:hurrah_haru


 
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