ウチダ トモコ ウチダ トモコ 66ヶ月前

花を魅せるステンレス花器

ひと手間かけた魅力に心奪われて


トントン トントン!
トントン トントン!


先日のフルールマルシェのとき、
人々がにぎわうなか、ひたすら響いていた木槌の音。

何だろうと気になって、音を頼りにその場所を探してみると、
そこには、こんなエレガントな金属製のフラワーリースや
ボウルなどが美しく並べられていました。




それぞれ花やグリーンがあしらわれ、
金属製なのに、印象はふんわり冷たくないのが不思議。
植物をモチーフとしたやわらかなデザインに
思わず手がのびます。

あのトントン トントン! の音は、
この工房、ディ.エクリュデザイン を主宰する徳永彌生さんが
木槌でリースを叩いて、成形している音だったのです。

これはアルミなのかしら?
アルミや銅なら、こうして叩いて角度やニュアンスをつけるからね。
でも、それにしては澄んだ輝きです。

「このリースやボウルは、すべてステンレスなんですよ」(徳永さん)。

えっ、ステンレス!? 

ステンレスといえば、キッチン周りや棚や工具など、
その名の通り錆びない、丈夫で堅牢な素材の代表格。
硬いからこそ、普通は工場の機械でプレス成形されるものです。
だから、人が手で打って成形するなど、
見たことがありませんでした。
少なくとも私は。

実物に触れてみると、厚みは2ミリほど。
それでもさすがはステンレス。
手でちょっと力を加えた程度では、ビクともしやしません。

そして、手で成形するからこそ生まれる
微妙な揺らぎとニュアンスが美しく、
同じ商品でも1点1点、表情が違っています。

えーーーっ!? どういうこと?

「どうやってつくられるか、ご覧になりますか?」
興味津々な私に、徳永さんは笑顔を向けてくださいました。

ハイ! 拝見させてください!
これは絶対知りたい。ヒミツを教えてください、徳永さん!


 

ディ.エクリュデザインの工房に行ってみた!


私のいつもの知りたい欲が今回も爆発。
さっそくディ.エクリュデザインの工房を訪ねてみました。

で、



!!!!!
えっ!?  いきなり一体ここはドコ? ワタシはダレ!? 状態。

徳永さーん、徳永さーん!
ここって……工場!? 
なんだか、作られているものが想像よりデカすぎるんですがー。

「実はね、弊社は水門や防水扉のメーカーなのよ」(徳永さん)。

へっ? 水門? 防水扉? なぜ?

河川の水位を調節するのに欠かせない水門、
そして浸水から人々を守る防水扉。
これらに必須な堅牢さは、錆びない金属、ステンレスでこそ叶うもの。

そう、徳永さんのディ.エクリュデザインは、
ステンレスの魅力をもっと身近に知ってほしいという
メーカーの一事業として立ち上がった
テーブルウエアのブランドだったのです。

そしてその工房は、巨大な工場のど真ん中にありました。
水門の部品製造用の機械が
でーっかい部材を製造する工程に紛れるようにして、
手のひらサイズの製品がほろほろと製造されていくさまは、
なんだか夢を見ているよう。

水門製造用の機械のほか、
細かい作業に対応するための
ディ.エクリュデザイン専用オリジナル機械も導入されているのが、
まさに見どころといえます。

それではその工程を、さっそく拝見してみましょう。
 


 1. レーザーで切り込みを入れ、手作業で抜く


△ 本社から転送されてきたデザインデータをもとに、レーザーの機械を操作。右側の赤いブースの中にステンレスの板が入っています。


△ レーザーで切り抜かれた状態がこれ。これは、皿の下に敷いて使うアンダープレートです。デザインが細かいので、大きな部位しか抜けていません。


△ レーザーで入れた切り込みに沿って、ひとつずつくり抜いていくのは、なんと手作業!
 


 2. サンダーをかける


△ 1枚ずつサンダー(ヤスリ)をかけて、切り抜いた跡をなめらかに削り取ります。サンダーの刃も粗目→中目→細目と3段階変えて徐々になめらかに。

 

3. バレルで研磨


△ バレルとは、樽の意味。樽型の器に砥石、水、洗剤とアイテムを入れ、回転させて研磨します。同社ではテーブルウエア部門でのみ使用されている機械。


△ これが砥石。砥石の種類選別や、1回の使用量もかなり吟味されたとのこと。また、砥石の種類を変えて、バレル研磨は2回行われます。


△ ゴロゴロすること、なんと一昼夜。さらに砥石を変えてもう一昼夜、まるでフォンドボー! そして研磨が終わったバレルから、アイテムを取り出すのも、なんと手作業。洗剤水に沈んだ砥石の中から、ひとつずつアイテムを探し出して取り出すさまは、もやは宝探しです。


△ サンダーがけだけのもの(左)と比べて研磨後のもの(右)は、ステンレスならではの輝きを放っているのがわかります。
 

4. 水洗い→刻印入れ→成形


△ 削れた砥石の粉が付着してしまうので、すぐに丁寧に水洗い。乾かしたらブランドネームを刻印します。


トントン トントン! これがフルールマルシェで私が見かけた作業。木槌で少しずつ叩いて成形し、ボウルなら全体に丸みを、リースや箸置き、ボウルの脚などには微妙なニュアンスをつけます。すべて経験とセンスがものをいう世界。最後に仕上げのつや磨きの機械にかけて完了です。


△ 写真だとわかりにくいけれど、水洗いして成形前のフラワーリース(右下)と、成形してニュアンスをつけたフラワーリース(左上)。ひとつひとつ手作業によって生まれた揺らぎが、個々ごとの輝きをつくります。


いかがでしたか。
水門という巨大な公共設備の製造技術に
他業種の技術も組み合わさって、
テーブルウエアというちっちゃなちっちゃなホームユースの世界に
新しくも大きな風が吹きこまれてきました。
コンピューターなどの機械類がどんなに活躍しても、
それをつなぎ、人肌のぬくもりをつくるのは
やはり「人の手」であると、
ものづくりの奥深さを改めて知ることができました。


 

花を飾りたくなる、そんなテーブルウエアたち

さて、それでは
ディ.エクリュデザインの製品をちらっと拝見。
まずは「植物生活」な私たちがすぐさま使ってみたくなる
フラワーリースから。


△ これがフルールマルシェで見かけたフラワーリース(大)の正月バージョンアレンジメント。 写真/ディ.エクリュデザイン


△ アーティフィシャルフラワーのブーケを3つつけたフラワーリース、クリスマスのアレンジメント。制作/La Fraise 黒部美英 写真/ディ.エクリュデザイン



ステンレス輝くリースはそのままでも十分に印象的だけれども、
ゲストのある日や気分次第で
ミニブーケを季節ごとに取り替えたら、楽しそう!

そうだ。
春になったら咲き急ぐパンジー&ビオラやプリムラを
ぜいたくにどっさり飾ったり、
5月になって庭のバラがたくさん咲いたら、
やっぱりローズリースにしつらえてみたい。
梅雨前には切り戻したハーブをさして
ドライにしながらディスプレイできるかな。


そして、夏になったらこれ ↓↓↓

△ ブドウの果実がふくらんできたら、こんな夏のアレンジもすてき。 写真/ディ.エクリュデザイン



ほか、こんな手ごろなアイテムもそろいます。
小さなアレンジメントやブーケに使えるから、
デイリーユースにもピッタリです。


グリーンクリップは、花留めにもガラス器のスタンドにもなる優れもの。奥がつる草のデザイン、手前が花のデザイン。角タイプのガラス器も選べます。


ブーケを立てておけるスタンド。 参考商品、価格未定。写真/ディ.エクリュデザイン


ちっちゃなブーケがスワッグみたいに飾れます。 参考商品、価格未定。写真/ディ.エクリュデザイン



△ ディ.エクリュデザインの製品、最大サイズにあたるダリアバスケット(大)。吸水スポンジを置いてアレンジメントにするのはもちろん、ワインやパンを入れてテーブルに供せば、華やかなおもてなしに。 
写真/ディ.エクリュデザイン



もちろん、どれもステンレス製だから、
戸外のドアにかけたり、ガーデンで使っても大丈夫。
エレガントで華奢に見えるけれど、
実は日本の製造業技術の賜物ですから、
質実剛健な大和撫子アイテムなんです。

こんなにすてきでユースフルなアイテム、
実物を手にとってみたいでしょ?

だったら2月に東京ドームで開催される
「テーブルウェア・フェスティバル2018」へぜひ。
ディ.エクリュデザイン「My Style セレクション」のコーナーで
待っていてくれていますよ!


「もちろん、リースだけではなく、テーブルウェア一式でお待ちしております」(徳永さん)



=== イベント情報 ===
テーブルウェア・フェスティバル2018 - 暮らしを彩る器展 -

日時 2018年2/4(日)〜12(月) 10:00〜19:00(2/4のみ11:00〜。入場は閉場の1時間前まで)
会場 東京ドーム(東京都文京区)
入場料 2,100円(小学生以下無料、ただし大人の付き添いが必要。前売り券1,800円)
https://www.tokyo-dome.co.jp/tableware/index.html



text & photo ウチダトモコ  写真提供:D-ecru-design
 
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この記事のライター

ウチダ トモコ
ウチダ トモコ

園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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