ウチダ トモコ ウチダ トモコ 60ヶ月前

水やりをもっと簡単に。もっとアクティブに。[1]

水切れしやすい季節になりました


ガーデニングシーズンに各地でのフラワーショウ、母の日、父の日など花贈りの日もあって、みなさんのお宅でも、花鉢や植物がふえたのではないでしょうか。

鉢数がふえてくると、ちょっと大変になるのが、そう! 水やり。

水場と植物の間を重たいジョウロを抱えて何往復もしたり。けっこう重労働。ベランダガーデニングの人なら、洗面所やキッチンとベランダを往復して、室内がびしょびしょ! なんてこともよくあるお話です。

季節は初夏から夏へと向かっていて、鉢土の乾きが一気にスピードアップしている今日このごろ。ガーデニングの基本の基本、水やりが、負担に思えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

では、ここで今日の私の水やり一幕を。

△ バスケット仕立てのギフトは、こんなふうにポリポットがビニール袋に入っていました。このまま水やりすると袋内に水がたまり、腐ってしまいます。


△ 植物が植えてあるポリポットを袋から出し、テラスやバスルームなど、濡れてもよい場所に移動させて水やりをします。


水やり頻度が上がると、この作業がほぼ毎日になるので、ちょっと大変。うっかり寝坊した朝なんて、冷や汗ものです。

そんなとき、園芸界の情報通から「水やりを簡単にできるツールがあるよ」と教えてもらいました。

えーっ、それって自動潅水器? それとも水分計? 


というわけで、さっそく訪ねてきましたよ。
私たちを水やりのストレスから解放してくれるという、その夢のツールを開発したメーカーさんを。


 

「あの」水やりのタイミングは、間違っていた!?


株式会社キャノビチェ CEO 折原龍さん。なんと、前職は大手航空会社のパイロット。その素顔は、ハーブ大好きな植物男子だったのです。

▽ オフィスにも植物がいっぱい。



ガーデニングの基本を調べようと園芸書を読んだり、インターネットで調べてみると、「植物がしおれ始めたら水を与えましょう」と書かれていることがあります。

確かに植物がしおれることは目に見える状態だけれども、ではいったい、どの程度の状態が「しおれ始め」なのか、ちょっとわかりにくいのです。


「実は、水やりのタイミングは『しおれ始めたとき』というのが、間違っていたのです」と折原さん。

えっ!? 正しいと思っていた知識が、間違っていた?
それは困る…(T_T)
いったい、どういうことでしょうか。

「植物が『しおれ始めたと目視できる』状態は、実はすでに植物にとっては危険な状態なんですよ。危険な状態になってから水を与えても手遅れで、特に先々の成長を担う若い細胞は、死んでしまっていることが少なくありません」(折原さん)。

なんと! 「しおれ始めたとき」は、手遅れだったんですね。
それはショック。手遅れで、枯らしてしまった植物があるかもしれません。

また、園芸書などには「植物が欲しがるときに水を与えましょう」と書かれていることもありますが、この「植物が欲しがるとき」は、どうやって判断したらよいのでしょうか。

「しおれ始めたとき」は手遅れなのだから、その前段階の「植物が欲しがるとき」って、いったいどんなときなのでしょうか?



3つの植物による、土中の *有効水分域

*有効水分域 植物が根腐れしてしまう水分域と水枯れしてしまう水分域の両方からバッファをとった水分域。この水分域では植物はストレスなく水分を取り入れることができます。また、この表では多肉植物、観葉植物、ランの3つを代表的に記しています。
図提供/キャビノチェ株式会社


植物の根は土や水ごけなどの植え込み資材に覆われていることが一般的です。そして、土や水ごけなどが含む水分量が多すぎると根腐れを起こし、少なすぎるとしおれてしまいます。

その間にある、植物にとって「ちょうどよい」水分量域をキープして栽培すれば、植物は根腐れすることなく、しおれることなく、いつでもご機嫌に成長することができるというわけです。そして研究によって、多くの植物におけるこの有効水分域は、1.7 〜 2.3 であることが判明しました。

また、表内の点線で囲まれた領域は、有効水分域のうち乾き気味の状態です。このとき植物は、乾くことによって水の代わりに土中に入り込んでくる空気の力を得て、グンと根を伸ばします。
しかしながら、水切れの直前であるその領域を、地上に出ている茎葉の様子から正確に判断することは、非常に難しいのです。


なるほど。
茎葉に様子が現れて「しおれ始めたとき」は手遅れ。
そして、その前段階の「植物が水を要する有効水分域」を、どうにか知ることはできないのでしょうか。


「そうですね。これまでたくさんの園芸家やメーカーが『植物が欲しがるとき』を目視できるように、研究を重ねてきました。その結果として、商品化されたものがこちらです」(折原さん)


△ 市販されているさまざまな水分計。茶色の棒状のものは、ハイドロカルチャーなどの水耕栽培用のもの。緑色の棒状のものは、薄紙が挟んであり、紙が濡れた位置で水分量を確認するという、ややアナログな仕組みです。右のメーター付きは、営利栽培の現場で使用されているもので、高価。左側はLEDを利用して水切れを知らせるタイプ。


「いろいろな種類がありますが、実際使ってみると、高価な営利用以外は正確さに欠け、水分計として利用するには心もとないと感じました。そこで、どうにか正確で使いやすく、安価な水分計ができないものかと、自作を始めました」。

自作!?


折原さんは、幼いころから、園芸大好き、そして手作り大好きな少年だったのです。だから、この世の中になければ自分でつくる。自作なんてお手のもの! だってわけです。


まず、参考にしたのは、上の写真の緑色の棒状タイプ。

「構造がシンプルでわかりやすく、安価にできそうだったからです」(折原さん)


→→→ 続きは後半へ




text & photo ウチダトモコ  取材協力 & 写真提供 キャビノチェ株式会社


 
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この記事のライター

ウチダ トモコ
ウチダ トモコ

園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。

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