寄せ植え男子!
あの寄せ植え男子に会いに
先日紹介した記事「寄せ植え教室を訪ねてみた」。
ご覧になっていただけたでしょうか。
そして、記事内にひっそりと登場していた男性を覚えていらっしゃいますか?
そう。若々しく初々しくも、全身全霊を込めて寄せ植え制作するスタイルが、ちょっと印象的だった男性。
△ この前の教室で制作した寄せ植えから。左手前が、彼の作品。細かく株分けしながら植え込んだものでした。
そして、教室でつくった作品について、彼はこんな風にコメントをくれました。
「毎回教室でつくった作品は、勤務先のレストランに飾っているんです」。
へー! それは気になる!
レストランで寄せ植え作品が、どんな風に飾られているんだろう。
というわけで、寄せ植えのアフターを追いかけようと、そのお店を訪ねてみることにしました。
東京都福生市。
都心から約50キロほどの距離がある福生市は、東京都とはいえ、まだ畑や雑木林が散在するのどかな地域です。
△ 玉川上水から引いた熊川分水が、界隈を巡っていました。
△ こちらの老舗酒蔵の長屋門をくぐって左奥へ進むと、レストランが現れます。
さぁ、店内に入ってみましょう。
あ、こんにちは!
この前の寄せ植え男子こと、木下孟洋(きのした・たけひろ)さんです。
こちらのレストランでキッチンスタッフとして働いている、お料理男子でもありました(笑)。
そして、その頭上の柱に、おぉ! ありました。
△ 先日の教室で制作したリーフのリース寄せ植えは、店内に入ってすぐの壁にかけられていました。
「デザイン重視のために細かく株分けして植えたので、しっかり根づくまでは平らにして置いていました」と木下さん。
制作から2週間ほど経過し、新しい根が伸びて新芽が出てきたのが確認できたので、ようやく前日、壁にかけたのだそう。
この場所は大きな窓に対面していて、間接的に外光が入るため、寄せ植えに柔らかな日ざしが当たります。
こうした日当たり具合が、ヒューケラ、ワイヤープランツ‘スポットライト’、ミカニア、テイカカズラなどのリーフ類にとってはベストな環境。
もちろん、ときどき乾き具合をチェックしてリースを床に下ろし、たっぷり水やりをして、水が切れてから再びかけ直す手間は惜しみません。
木々に囲まれたテラスに花が
さて、いったん外へ出てみましょう。
△ エントランス脇のテーブルに、これまでの寄せ植え作品がずらり。
△ 「多肉植物の寄せ植えは、少し株が減ってしまったんですけど、こうして花が咲いてくれるとうれしくて」(木下さん)。
個性的な容器は、アンティークのケーキの型。「Garden and Craftsさんで購入しました」。
△ ヘデラとオウゴンカズラを、鳥カゴ型のバスケットに植えた寄せ植え。
「これは植え込むのにとても苦労しました。思いのほか、土もたくさん入るし。いったん崩して植え替えようと思うのだけど、植え込みの手間を思うと、なかなかできなくて」と照れる木下さん。
△ 現在、リーフ類が多いこのテーブルに「色を添えたくて、ヒマワリの苗を買ってきて、植えました」。
△ 大好きなワイヤープランツ‘スポットライト’。ブリキの鉢が少しずつ錆びて、ジャンクは風合いが出てきたのがお気に入り。
△ 小さなグリーンは、スタンドにまとめてエントランスにこぢんまりと。
△ スイートバジルが植えられたシンプルな琺瑯のポットも、以前教室でつくった寄せ植えに使ったもの。「このバジルをちょっと収穫して、まかない に添えるんです」とうれしそうな木下さん。
自分で育てたものを食べるという豊かさに感激し、すっかりハーブ栽培にハマってしまった木下さん。
春にはカモミールを大型プランター3つ分も栽培し、収穫してドライに。みんなでハーブティーにして楽みました。
レストラン店内でドライにしていたので、お客さまの目に留るアイキャッチャーになったそうです。
「自分でつくれる」って、すごい
△ テラスを囲む大型プランターにも花がいっぱい。なんとこれは木下さんの手づくりです。
△ 移動がラクなように隠しキャスターつきで、腐らないようにステンレス板が仕込んであります。
「当店は酒蔵なので、昔、酒を仕込んだ樽の蓋が倉庫にたくさんあるんです。その蓋をいただいてつくったんですよ!」(木下さん)
そのほかにもテラス周りには、寄せ植えのジャンルを超えて、木下さんのクラフトがいろいろ。
どれも凝ったつくりなのには驚きです。
レストランは忙しい仕事なのに、いつ手がけているんだろう?
「植物の手入れは、すべて勤務時間外に作業しています。もちろん木工なども休みの日を利用したりして」。
植物を育ててみたり、寄せ植えをつくってみたり、そして、木工にトライしてみたり。
思えば木下さんの生業であるキッチンスタッフも、「料理をつくる」という、恰好の「自分でつくる」仕事です。
「自分でなんでもつくれる、できるって、いいなって思いませんか? だから自分の時間はできるだけ、つくることに使っています。忙しいけれど、全然苦じゃないっていうか、楽しくて」と笑う木下さん。
実は木下さん、新たにハマって忙しいジャンルがあるんですって。
それがこちら。
ドライフラワーによるアレンジメントです。
△ フロアの一角に飾られた、ドライフラワーのスクエアリース。これも木下さんの作品でした。
△▽ こちらはリングのリース。「飾る角度によって、ほら、印象がガラッと変わるんですよ。それが寄せ植えとは違うおもしろさというか、魅力かなぁ」(木下さん)。
ドライフラワー教室のことは、あの、則子さんの教室の生徒仲間から教えていただいて、通うようになりました。
今は、寄せ植え教室とドライフラワー教室をハシゴする熱心さなんですって!
元々は、植物、そして寄せ植えに興味があったわけではなかった木下さん。
なぜ、則子さんの寄せ植え教室に通うことになったのか、そのきっかけを尋ねてみました。
「たまたま、通りかかったんです、「Garden and Crafts」の前を。すてきだな、何のお店だろうって調べて、ホームページを見てみたら、寄せ植え教室の案内を見つけて。それで、なんです」。
何と偶然の出会い。
ちょっとできるようになればいいかな? と気軽な気持ちで通い始めた寄せ植え教室。
気づいたらハマってしまって、もう3年も通っているとか。
「以前の自分だったら、考えられませんよ(笑)。ひとりでガーデンショップへ行って花苗をしげしげ選んだりするなんて。ガーデンショップには、いつも1時間ぐらい滞在しちゃいます」(木下さん)。
偶然通りかかったすてきなお店。
そこでちょっと始めてみた寄せ植え。
花苗を買いに出かけるようになり、廃材を使ったクラフトにも挑戦。
そして、ドライフラワーのアレンジメントにも夢中。
「だから若松先生には、とても感謝しているんです。
つくる楽しみのきっかけは、やっぱり先生の寄せ植え教室だったから」(木下さん)。
自分の手で、何かをつくり出す喜びに夢中の木下さん。
創作意欲の広がりは、止まることを知りません。
さて、こんな寄せ植え男子、木下さんの寄せ植えや作品に会える場所は、こちらのレストランです。
多摩川からもほど近い立地だから、夏の日帰り散策のついでに、ぜひ立ち寄ってみて。
通常はキッチンで作業に勤しむ木下さんだから、
もしも、ホールでひょっこり姿を見かけることができたら、とてもラッキーかも!?
=== 取材協力 ===
福生のビール小屋
東京都福生市熊川1 [Map]
TEL 042-553-0171
http://tamajiman.co.jp/koya/
Text & Photo ウチダトモコ
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この記事のライター
ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。