苔喰む人々
突然ですが、みなさんは日本の食料自給率ってご存じですか?
調べたら、カロリーベースで38%、生産額ベースで65%だそうです(平成29年度)。
当然だと思っていたけれど、食料の多くが輸入に頼っているということには違いありません。
必ずしも自給率が高ければよいわけではありませんが、
日本の食卓は諸外国の農業や漁業がなければ、成立しないということです。
そこで、国内産の食物について考えてみると、そういえばまだまだ食べたことがない、食べるきっかけがなかった食材が国内にあるのも確か。各地にはそんな素材が、探せばまだいろいろありそうですよね。
そんな折、まだ私が食べたことがない植物が供される、パーティにお誘いいただきました!
食いしん坊の私でも、まだ食べたことがなかった植物とは。
そう。それがこの記事のタイトルにある「苔」です。
えっ!? 苔って、食べられるの…?
って、そこからがまず、疑問なんですが。
ともかく、食べられるっていうのだから、食べてみようじゃないですか。
というわけでさっそく、苔食パーティ会場の都内某所を訪ねてみました。

△ パーティのオープニングご挨拶に続き、本日の苔食メニューの紹介です。主催はもちろん苔クリエーターの石河英作(いしこ・ひでさく)さん。

△ こちらが本日のメニュー。なんと前菜からデザートまでの苔フルコース!? 今回は7品のうち、苔マークがついている4品が、実際に苔が使われているもの。残り3品は苔や苔が生えている状態をイメージしています。
思えば苔って、庭やブロック塀、石などにも生えている身近な植物。
身近な範囲でも、数種類の苔を見つけることができます。
これらを食べられるなら、自給自足なんて簡単じゃん! …って思えそうですが
「今回食べる苔は、ジャゴケといいます。苔はその辺に生えてはいるけれど、種類によってはアレルギー物質を含んでいたり、寄生虫が潜んでいたりと、危険なことも。必ずプロの監修のもと、チャレンジしましょう」と石河さん。
なるほど。
それに「その辺に生えている」とはいえ、自分の敷地以外の植物を勝手に採集することは違法行為になりますし、生産者からジャゴケを購入するなど、きちんとしたルートで入手したいものです。
でもなぜ、人は苔を食用にしなかったのでしょうか?
「やはり、ただ食べても美味しいものではないし、栄養面も乏しいことが理由のようです。
でもせっかくだし、だったら美味しく食べる方法はないかと、模索を始めました。」(石河さん)
そうして食用可能なジャゴケから、様々なメニュー開発を始めたそうです。
で、そんなウワサのジャゴケはこちら。

△ こんな風にペタッと這う形。写真はマツタケジャゴケです。触れるとふわっと香ばしい香りが漂います。奥にある2つのボトルは、なんとジャゴケから抽出したエッセンシャルオイル。抽出方法などは石河さんのブログの こちらへ。

△ ▽ 湯通ししたジャゴケは、ドリンク類のトッピング用。芳香と食感を楽しみながら、飲めるジャゴケバー!

では、本日の苔食メニューを、たーんとご覧ください。


△ 右がジャゴケのパウダーを入れたソフトフランスパン。ジャゴケ入りバターと、ジャゴケの芳香を移したオイルでいただきます。

△ フレッシュサラダ 苔玉ッシュ添え とジャゴケフランスパン。「苔玉ッシュ?」って方は、ぜひ記事を最後まで読んでね♪

△ カジキのグリル 苔庭風 パセリとパン粉で苔生す庭を表現。ガーリックが効いてます。器とのコーディネートも素敵。
そして、これが苔界の話題を席巻したアレ!


△ 苔食クラスタでは言わずと知れた人気メニュー。そして石河さんの渾身の逸品がこのMOSSバーガー! えっ、モス? ってMOSSは英語で苔のこと! ハッシュタグは #MOSSバーガー でお願いします! ジャゴケ入りバンズに素揚げのジャゴケをレタスのごとく挟み、油との好相性を見せつけてくれました。今回は素揚げしたジャゴケを添えたフライドポテト、ジャゴポテセットでの提供です。
*もう一つのメイン「森のペペロンチーノ」は写真を撮れませんでした。お詫び申し上げます。


△ デザートの白玉寒天は、刻みジャゴケ入りの寒天に、ジャゴケパウダー入りの白玉。和風なネーミングなのにこのいでたちにギョッ! 農学部から植物の企業へ進んで、長く勤務していた経歴のある石河さん。理系の苔食メンバーとあれこれアイデアを出し合い、寒天といえば実験室の寒天培地からのイマジネーションから生まれた逸品です。さっぱりとした夏らしいお味でした。シフォンケーキは、抹茶パウダーで苔色に。
それではお待たせしました。
思わせぶりな前出、苔マッシュに再び登場してもらいましょう。
パーティのゲストなら、黙っていればあれこれ食事や飲み物が供されて、だからこその「お客さま」なわけですが、このパーティーでは「参加型メニュー」があるのですよ。
そう。自分で作らないと食べられないという仕組み。これもお楽しみのひとつ!

△ 苔玉ッシュ。角切りベーコンを仕込んだマッシュポテトの表面を2色のグリーンパウダーが覆い、苔と地衣類を表現し、苔玉に扮するという眩しい逸品。
そう。これを各自がこしらえて、先の フレッシュサラダ 苔玉ッシュ添え がようやく完成するという仕掛けだったのです。写真は先に供された見本用。美しく和菓子のよう。

△ 材料です。マッシュポテトボール(右奥)とベジタブルパウダー2種(左)。ジャゴケのパウダーは粒子が粗くポテトにつきにくいので、こちらではブロッコリー(左、薄緑)とホウレンソウ(右、濃緑)のベジタブルパウダーを使用しています。

△ マッシュポテトボールにひとつひとつ、パウダーを指先で少しずつつけていきます。濃淡をうまく使って、苔と地衣類らしさを表現できるかな?

△ できました! 俺の苔玉ッシュ! ジャゴケをトッピングにのせて、ちょっと生き物みたい! 自作すると愛おしくなっちゃって、みなさん、なかなか口にできませんでした。
さて、苔食フルコースはいかがでしたか?
石河さんのブランド「道草」では、ときどきこうして仲間を集め、新しいメニュー開発をしたりと、苔食を楽しんでいるそう。
参加者募集をしていることもあるので、ホームページ やブログ などをチェックしてみてください。
この広い地球上で、まだ食べたことがない植物を試してみたい。
ちょっと秘密結社みたいにレアなヤツを狙うなら、
だけども合法的(笑)に喰みたいならば、ジャゴケ、おすすめですよ♪
*苔食パーティー (Twitter モーメント)
https://twitter.com/i/moments/1029147549758717954

text & photo ウチダトモコ
調べたら、カロリーベースで38%、生産額ベースで65%だそうです(平成29年度)。
当然だと思っていたけれど、食料の多くが輸入に頼っているということには違いありません。
必ずしも自給率が高ければよいわけではありませんが、
日本の食卓は諸外国の農業や漁業がなければ、成立しないということです。
そこで、国内産の食物について考えてみると、そういえばまだまだ食べたことがない、食べるきっかけがなかった食材が国内にあるのも確か。各地にはそんな素材が、探せばまだいろいろありそうですよね。
そんな折、まだ私が食べたことがない植物が供される、パーティにお誘いいただきました!
食いしん坊の私でも、まだ食べたことがなかった植物とは。
そう。それがこの記事のタイトルにある「苔」です。
えっ!? 苔って、食べられるの…?
って、そこからがまず、疑問なんですが。
ともかく、食べられるっていうのだから、食べてみようじゃないですか。
というわけでさっそく、苔食パーティ会場の都内某所を訪ねてみました。
食べられる苔こと、ジャゴケ
△ パーティのオープニングご挨拶に続き、本日の苔食メニューの紹介です。主催はもちろん苔クリエーターの石河英作(いしこ・ひでさく)さん。
△ こちらが本日のメニュー。なんと前菜からデザートまでの苔フルコース!? 今回は7品のうち、苔マークがついている4品が、実際に苔が使われているもの。残り3品は苔や苔が生えている状態をイメージしています。
思えば苔って、庭やブロック塀、石などにも生えている身近な植物。
身近な範囲でも、数種類の苔を見つけることができます。
これらを食べられるなら、自給自足なんて簡単じゃん! …って思えそうですが
「今回食べる苔は、ジャゴケといいます。苔はその辺に生えてはいるけれど、種類によってはアレルギー物質を含んでいたり、寄生虫が潜んでいたりと、危険なことも。必ずプロの監修のもと、チャレンジしましょう」と石河さん。
なるほど。
それに「その辺に生えている」とはいえ、自分の敷地以外の植物を勝手に採集することは違法行為になりますし、生産者からジャゴケを購入するなど、きちんとしたルートで入手したいものです。
でもなぜ、人は苔を食用にしなかったのでしょうか?
「やはり、ただ食べても美味しいものではないし、栄養面も乏しいことが理由のようです。
でもせっかくだし、だったら美味しく食べる方法はないかと、模索を始めました。」(石河さん)
そうして食用可能なジャゴケから、様々なメニュー開発を始めたそうです。
で、そんなウワサのジャゴケはこちら。
△ こんな風にペタッと這う形。写真はマツタケジャゴケです。触れるとふわっと香ばしい香りが漂います。奥にある2つのボトルは、なんとジャゴケから抽出したエッセンシャルオイル。抽出方法などは石河さんのブログの こちらへ。
△ ▽ 湯通ししたジャゴケは、ドリンク類のトッピング用。芳香と食感を楽しみながら、飲めるジャゴケバー!
では、本日の苔食メニューを、たーんとご覧ください。
△ 右がジャゴケのパウダーを入れたソフトフランスパン。ジャゴケ入りバターと、ジャゴケの芳香を移したオイルでいただきます。
△ フレッシュサラダ 苔玉ッシュ添え とジャゴケフランスパン。「苔玉ッシュ?」って方は、ぜひ記事を最後まで読んでね♪
△ カジキのグリル 苔庭風 パセリとパン粉で苔生す庭を表現。ガーリックが効いてます。器とのコーディネートも素敵。
そして、これが苔界の話題を席巻したアレ!
△ 苔食クラスタでは言わずと知れた人気メニュー。そして石河さんの渾身の逸品がこのMOSSバーガー! えっ、モス? ってMOSSは英語で苔のこと! ハッシュタグは #MOSSバーガー でお願いします! ジャゴケ入りバンズに素揚げのジャゴケをレタスのごとく挟み、油との好相性を見せつけてくれました。今回は素揚げしたジャゴケを添えたフライドポテト、ジャゴポテセットでの提供です。
*もう一つのメイン「森のペペロンチーノ」は写真を撮れませんでした。お詫び申し上げます。
△ デザートの白玉寒天は、刻みジャゴケ入りの寒天に、ジャゴケパウダー入りの白玉。和風なネーミングなのにこのいでたちにギョッ! 農学部から植物の企業へ進んで、長く勤務していた経歴のある石河さん。理系の苔食メンバーとあれこれアイデアを出し合い、寒天といえば実験室の寒天培地からのイマジネーションから生まれた逸品です。さっぱりとした夏らしいお味でした。シフォンケーキは、抹茶パウダーで苔色に。
すごいぞ! 苔マッシュ!
それではお待たせしました。
思わせぶりな前出、苔マッシュに再び登場してもらいましょう。
パーティのゲストなら、黙っていればあれこれ食事や飲み物が供されて、だからこその「お客さま」なわけですが、このパーティーでは「参加型メニュー」があるのですよ。
そう。自分で作らないと食べられないという仕組み。これもお楽しみのひとつ!
△ 苔玉ッシュ。角切りベーコンを仕込んだマッシュポテトの表面を2色のグリーンパウダーが覆い、苔と地衣類を表現し、苔玉に扮するという眩しい逸品。
そう。これを各自がこしらえて、先の フレッシュサラダ 苔玉ッシュ添え がようやく完成するという仕掛けだったのです。写真は先に供された見本用。美しく和菓子のよう。
△ 材料です。マッシュポテトボール(右奥)とベジタブルパウダー2種(左)。ジャゴケのパウダーは粒子が粗くポテトにつきにくいので、こちらではブロッコリー(左、薄緑)とホウレンソウ(右、濃緑)のベジタブルパウダーを使用しています。
△ マッシュポテトボールにひとつひとつ、パウダーを指先で少しずつつけていきます。濃淡をうまく使って、苔と地衣類らしさを表現できるかな?
△ できました! 俺の苔玉ッシュ! ジャゴケをトッピングにのせて、ちょっと生き物みたい! 自作すると愛おしくなっちゃって、みなさん、なかなか口にできませんでした。
さて、苔食フルコースはいかがでしたか?
石河さんのブランド「道草」では、ときどきこうして仲間を集め、新しいメニュー開発をしたりと、苔食を楽しんでいるそう。
参加者募集をしていることもあるので、ホームページ やブログ などをチェックしてみてください。
この広い地球上で、まだ食べたことがない植物を試してみたい。
ちょっと秘密結社みたいにレアなヤツを狙うなら、
だけども合法的(笑)に喰みたいならば、ジャゴケ、おすすめですよ♪
*苔食パーティー (Twitter モーメント)
https://twitter.com/i/moments/1029147549758717954
text & photo ウチダトモコ
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この記事のライター
ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。