植物生活編集部 植物生活編集部 51ヶ月前

続・きょうの花活け  花と鎌倉とウーロンと、ときどき茶話。/vol.26 正月竹活


vol.26 正月竹活


こんにちは! CHAJINです。

こちらは、かつて月刊フローリストさんで連載させていただいていた
「花と鎌倉とウーロンと。」のエピソード2……とでも言いましょうか。

季節ごとに出逢う日々の花あしらいについて、
花活けを始めたばかりの植物好きなアラフォー女子のMちゃんに
わかり易~く(時に脱線しながら)お話ししてゆくWEB版の花教室みたいなコーナーです。

また、アトリエのある鎌倉界隈のことや愛猫ウーロンについての茶話も綴っております。

諸々緩さ満載ながら、皆さまの日々の花活けに少しでもお役に立てればうれしいです。
それでは今回もよろしくおねがいします~!
 



花と

  




CHAJINさん(以下C)「この記事がアップされるのは、お正月の足音が……という時期くらいかもしれないですが」

植物好きなアラフォー女子M(以下M)「そうですね」

C「なので今回は、ちょっとお正月を思ったお話ってことで」

M「はい」

C「僕はクリスマスも装飾とかするんですけど、お正月のディスプレーもしてて」

M「ふんふん」

C「普段は大柄なものよりは手のひらサイズであったり小さいものが多いんですけど、この時期はタケを立てるみたいな(大きなもの)も……」

M「タケを立てる……!?」

C「タケを立てるってなんだって思うかもしれないんですけど(笑)」

M「はい」

C「孟宗竹みたいな、直径にしてどのくらいですかね~。15cm……。15cmってそんなことないか、でも10cmよりは大きいと思うんです」

M「おぉ~。結構大きめのタケですね」

C「そう、結構太い。そういうタケに穴を空ける。タケって節があるじゃないですか」

M「はい、はい」

C「そこをノコギリで、節ごとに2回切って」

M「CHAJINさんご自分でですか?」

C「そうなんです。ねじり鉢巻をして(タケの節のところを)ノコギリで切って。で、ノミ。いつもミノって言っちゃうんだけど、それだと焼き肉になっちゃうから(笑)」

M「おいしいですよね(笑)」

C「はい(笑)。で、ノミで(切ったところを)カンカンってやって、タケにパコって窓を空けるんですよ」

M「ほぅほぅほぅ」

C「あ、その前にタケはまず洗って。それから僕の場合はサラダオイルで磨くんだけど」

M「へぇーーー!」

C「そうするとちょっと、しっとりとして」

M「へぇーーーーーー!!!」

C「粗塩で磨くっていう方もいますけど。そうするとなんとなく(タケの)ツヤが保たれるので」

M「へぇ~~~~」

C「タケって乾いてくると、白くなって」

M「そうですね、線が入るというか、健康じゃない爪みたいな感じに……」

C「そうそうそう(笑)。なのでツヤを保つためにそういうことをしながら(タケに)窓を空けて。(タケ自体の大きさは)高さにしたら大体1m80くらいかなぁ」

M「おっきいですね~!」

C「それくらいのタケを鉄板みたいなところにブスッと挿して。そういう安定するヤツ(鉄板)を作って持ってるんですけど、そこに挿して、窓にランダムにマツとかをいろいろ活ける、みたいな」

M「ほぉ~」

C「そういうタケ立てツアーみたいなのが、クリスマス明けから30日くらいまでの間にあって」

M「すごい密な時間ですね。数日の間に」

C「そうですね~。もうタケ立てツアーって自分では呼んでます(笑)」

M「おぉ!」

C「それで活けた作品のうちの、ある一つが(今回の)これなんですけど」

M「ほぉ~」

C「毎年、大体マツと“テンミ”って言ってナンテンの実を」

M「あぁ、あの赤いヤツ……」

C「はい。花市場だとセンリョウとかも出てますけど、このテンミっていうのも出ていて」

M「ほぉ」

C「ナンテンは水を吸わずともというか、すごくそのままの状態が保たれやすくて。ちょっとポロポロ落ちる懸念はあるんだけど、でもディスプレーとかには向いていて」

M「へぇ~」

C「センリョウとかだと、ちょっと葉っぱが下がったり(※編集部注:葉っぱの元気がなくなること)するとね、少し見た目に具合が悪いので、そういう都合もあるんですけど」

M「ふんふん」

C「マツと(ナンテンのような)赤い実と、タケと、松竹梅みたいなおめでたいことでいうと、あとウメ的なもの。僕、結構ロウバイを使うんですけど」

M「あぁ、この黄色いヤツですね」

C「そうですね~」

M「キレイですよね、ロウバイ」

C「あとは同時期に赤いボケとかもよく(市場に)出てるので、赤いボケだったり白いボケだったり……そういった枝ものをタケに空けた窓の中に活けて、新年を待つ、祝う、みたいな」

M「待つ……マツで待つ……」

C「あ、なんかダジャレみたいになっちゃいましたね(苦笑)」

M「すみません、あえてなのかなって思って拾っちゃいました(苦笑)」

C「いまはね、普通に言った(笑)。いやでもダジャレになってましたね(笑)」

M「はい……(笑)」

C「そんなことで、よく(このタケを使うスタイルを)やるんですけど」

M「はい」

C「お正月っていうものを迎えるにあたり、どんな花活けを(と考えたときに)……これはちょっとディスプレーなんでお家とかにはなかなかできないとは思うんですけど」


M「そうですね~」

C「でもこういうエッセンスというか。タケ筒に活ける、みたいなことが、ほかの季節でもいいんだけどやっぱり新年を祝うときに、非常に締まるなっていうところがあるので」

M「はい」

C「タケ筒って、多分その時期の花屋さんとかにも売ってると思うんですよ」

M「筒だけで売ってるんですか?」

C「筒だけで、そうそうそう」

M「へぇ~!」

C「いろんな太さの筒が売ってると思うんですね。で、小さいのになるとコップくらいのものから、このディスプレーで使ったようなわりと大きな尺のものも。花市場のセリでも出てるし、鎌倉あたりでも花屋さんの店頭にタケ筒が売ってる風景を見たことがありますし」



M「ほうほうほう」

C「もちろん普通の花器に活けてもいいんですけど、タケ筒に活けるだけで、なんとなく凛と和風みたいな空気感になるのでね」



M「ねぇ~、和です!」

C「ね。だから、それもちょっとオススメだったりするんです」

M「このタケ筒は、このまま直でお水を入れてるんですか?」

C「これに関しては直で活けてます。足元をちょっと縛って花束みたいにして投げ入れているのがこの写真のヤツです」

M「ほぉ~」

C「お花屋さんとかですと吸水性スポンジをその(タケの)中にあてこんで、そこに挿して活けるっていうことも多分やってるんで」

M「ふんふん」

C「お花屋さんで売っているもの(お正月のアレンジメント等)は、おそらくスポンジ込みでアレンジになっていると思います」

M「器としてちゃんと使えるんですね、タケって」

C「はい。ちょっと水を張るとそれなりの花器というか、しばらく楽しめる」

M「便利~」

C「でも気をつけないといけないのは、水をずっと張っているとタケ筒の裏側のところが気付かないうちに、ちょっとカビとかが生えることがあるので……」

M「あら」

C「心配な方はタケ筒の中に、ほどよく落としみたいなコップとかが入れば、そこに水を張ってやればしばらくタケ筒としては楽しめるんだけど……」

M「そうですね!」

C「ただね、もう一個心配事があるのが……」

M「はい?」

C「水が浸っているとカビの心配はあるものの、あんまり割れたりしないんだけど、乾いた状態だとあるタイミングでピキって割れたりするんで」

M「あ~。潔く、パカッとタケを割ったように」

C「そうそう、タケを割った性格っていうと素晴らしいんだけど(笑)。もし元旦にタケがパキって割れたらちょっと……」

M「ショックかも!」

C「これから一年どうやって過ごそうみたいになっちゃうから、それはちょっと心配なので」

M「じゃあやっぱり、お水を直で入れていた方がいいですね。裏側も見えないし」

C「そそそそ。だから一月も松の内も明けて、またちょっとしばらくチューリップとか春の花をこのタケ筒で楽しもうかなっていうときに一回裏側を見てもらって。それで確認してもらったらいいくらいの感じですね~」

M「あぁ、じゃあ大丈夫そう!」

C「花材の組み合わせも花風景を担う大事な要素なんだけど、やっぱり器もドッキングして一つの風景なんで。そこがなんとなく季節柄と合っているタケだったりすると、お正月くらいに見る花としては、非常に絵として締まるなっていうところもあるし」

M「うんうん」

C「花と器と両方で考えてみるっていうのも、ときにはいいのかもしれません」

M「ね。すごくおめでたい感というか、特別感みたいなものがあって、お正月にもってこいって感じがします。ちなみにこの入れてるお花についてはキクと……」

C「はい、あとマツと、テンミ(ナンテンの実)を使ってます、赤い。それからキクはピンポンギクっていわれるヤツで」

M「かわいいですね、丸っとしていて」

C「ね。それと私の好きなシキミアですね」

M「左のプツプツですね」

C「はい。あと、黄色いオンシジウムっていうランをちょっとだけ使ってます」

M「あぁ、この小さいヤツですね」

C「はい。ランって好みが分かれるところだと思うんですけど。なんとなくお正月に、気持ち高級感みたいなものも隠し味であると、少し空気的に“らしい”なっていうところもあるので」

M「はい」

C「この時期はいろんなランが売っているんですが、わりと切り花に合わせやすい小輪で、発色もよく、ちょっとおめでたい感も出るっていうと、このオンシジウムとかはいいかもしれないです」

M「はい~」

C「っていうことで、(お正月に向けて花屋さんで)タケ筒とか探してみたり、なかったらちょっとどっかの竹やぶで切らせてもらうか(笑)」

M「大冒険(笑)」

C「結構筋肉痛になっちゃうかもしれないけど、3日後くらいに(笑)。ぜひタケの花活けをやってみてください!」

M「がんばります~(笑)」


タケに花を活けるって
アーティスティックな感じでめちゃカッコイイ。
でも家でやるなんて思いつきもしませんでした。
花屋さんで切ったタケ筒が売っているなら
初心者レベルでも気軽にトライできそう~。
令和はじめの迎春は
松竹梅のめでたい花で、どうぞよいお年を!(byM)


 

鎌倉と、



パトロン



今回の“花と”のところで先述した竹活けのお店は、鎌倉にある歐林洞(おうりんどう)さんという西洋菓子のお店。
CHAJINを始めた約四半世紀前のこと、
当時されていたウェディング装花で初めて御縁を頂きました。
その装花きっかけで、その後は店内の花活けを担当させて頂くことになったのですが、
まだキャリアも浅く名も無き当時の自分に、
全ての装花を一任頂くというオーナーの懐深いその采配には感謝しかありませんでした。
ちなみにこちらの看板洋菓子の名は何と!“パトロン”。
言い得て妙と言いますか~、初めて見た時は、思わず、まさに!と膝を打ったのでございました。
めっちゃ美味しい歐林洞さんの“パトロン”。皆さんもぜひご賞味くださいませ~!




ときどき茶話、




やから君


来年は子年ですね!
ネズミと言えば、修行時代のお話。
当時の活け込み先だった新宿や池袋のパブやスナックに出かけると、
よく子猫級の大きさのネズミを見かけました。
特に開店前に行くと、床に仕掛けられた大きなガムテープみたいな罠に引っ掛かっている風景をよく目にしましたね(恐ろしや~)。
ネズミは見かけることはほぼ皆無ながら、鎌倉でよく目にすると言えば台湾リスでしょうか。
鎌倉観光の皆さんには人気のようですが、
わが家では、庭の藪椿が開花するやいなや、すぐに花芽を食しに来る要注意動物なのでございます。
藪椿ハンターまたは、輩(やから)君と呼んでいます(笑)。

 

・・・・・・


今年も一年こちらをご覧いただいた皆さまどうもありがとうございました!
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。どうぞ良いお年を~!!
 

活けラジ

脱線しまくり!? 「花と」のところでおしゃべりしているCHAJINさんと、編集者Mとの花トークラジオ
「活けラジ」やってます。

「迷わず活けよ、活ければわかるさ!」youtubeで 「vol.5」 配信中  vol.1から聴きたい、という人はこちら



プロフィール

CHAJIN/チャジン





フラワーアーティスト。
ORIGINAL FLOWER STYLE CHAJIN 主宰。

暮らしまわりの雑貨と季節の花を合わせ、個性的でありながらもカジュアルな花あしらい、存在感あるリースの作品が得意技。
雑誌や広告の花活け、店舗や温泉宿のディスプレイ、展示会の花活けの他、
鎌倉のアトリエや、池袋コミュニティカレッジ、NHKカルチャー青山教室、NHKカルチャー横浜ランドマーク教室、二子玉川高島屋S.C教室ほか、都内各所で開催中の花教室も人気。
著書に『きょうの花活け』(誠文堂新光社刊)、『花活けのココロ』(主婦と生活社刊)、
『小さな花あしらいと12ヶ月の花の話』、『季節の花でつくる12ヶ月のリース』(ともに芸文社刊)がある。
紅茶好きでプロレス好きで愛猫家。鎌倉在住。  

インスタグラム instagram.com/chajin_eye


これまでのお話はこちら


 
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この記事のライター

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