続・きょうの花活け 花と鎌倉とウーロンと、ときどき茶話。/vol.38 清々爽花
vol.38 清々爽花
こんにちは! CHAJINです。
こちらは、かつて月刊フローリストさんで連載させていただいていた
「花と鎌倉とウーロンと。」のエピソード2……とでも言いましょうか。
季節ごとに出逢う日々の花あしらいについて、
花活けを始めたばかりの植物好きなアラフォー女子のMちゃんに
わかり易~く(時に脱線しながら)お話ししてゆくWEB版の花教室みたいなコーナーです。
また、アトリエのある鎌倉界隈のことや愛猫ウーロンについての茶話も綴っております。
諸々緩さ満載ながら、皆さまの日々の花活けに少しでもお役に立てればうれしいです。
それでは今回もよろしくおねがいします~!
花と
CHAJINさん(以下C)「今回はコチラ」
M「なんか見るからに美味しそう感が」
C「そうですね~(笑)。この写真自体はちょうど去年の今頃、前のアトリエで撮ったやつなんですけど。ちょうど7月くらいの手に入りやすい花材かなって」
M「これはやはり、主役は実ものですか?」
C「そうですね。6月の回でもブルーベリーとかを使いましたけど、大体そのくらいから7月くらいまで、ブルーベリーとかが時季で。あと、この赤とか黒っぽいのは同じものなんですけど実の熟し方の違いが色の違いになっていて……これはブラックベリーといいます」
M「ブラックベリー」
C「はい。ジャムとかでもあると思うんですけど、これから夏を迎えるくらいの時期に○○ベリーという類いのものを花市場でも目にすることが多くて」
M「ふんふん。グリーンの中にベリーがあると、ここから摘めそうなナチュラル感ですね」
C「そうですね~。ただブラックベリーは今日の収録(7月7日)時点で、赤とか熟して色づいたものは全体量で言うとまだまだそんなにたくさんは出ていないっていう感じで。(7月上旬は)緑色のまだ若い固いやつが多いんですよね。赤いヤツとかはブラックベリーの“ロゼ”とか書いてあったりしますけど」
M「へぇ~。では緑色で売られていて、家に持って帰って活けていたらこの色になってくるということですか?」
C「そうなると楽しみが継続していいなと思うんだけど、なかなか切り花だとそうはならず……たとえば緑の実だったら、気持ち赤らんだかなっていうくらいで切り花としての役目を終えるっていうことが多いです」
M「なるほど~」
C「ただ、同時期に鉢物のブラックベリーもたまに売ってるんですけど、それだと緑の実から段々赤色、ロゼ色になって、それが熟して黒くなったらポトって落ちてブラックベリー完了っていう感じなので。その動線は鉢だと楽しめると思う」
M「ほぉほぉ」
C「だから、(7月上旬くらいに切り花で)赤く熟したブラックベリーが欲しいときは、朝早くに市場に行って、笑顔ながら取り合って買って来るみたいな(笑)」
M「みんな欲しい!っていう感じなんですか?」
C「もうハンティング(笑)しに。僕、カゴ持って仕入れに行くんですけど、笑顔なんですけどカゴを振り回して“その赤いロゼは俺が買うぜ!”っていう感じで仕入れてきましたよ~って、いつも花教室でもみんなに恩着せがましく言うんですけど(笑)」
M「(笑)。貴重なんですね、このロゼの赤い実は」
C「そうね、(この時期はまだ)全体量でいうとあまり多くはないので。少し早起きして、みたいなところはありますね」
M「市場の早起きって相当早そうですね」
C「このごろ花市場って、セリ自体は7時台からはじまるでしょうが、仲卸さんは結構早くから買ったり取り置きができたりするんですね」
M「へぇ~」
C「一昔前はなんとなく5時から6時くらいがゴールデンタイムだったかなっていうのがあるんだけど」
M「はい」
C「このごろなんだか印象としては4時から5時くらいとかに行かないと自分の欲しいものが手に入らないような空気感とか、僕は感じてるんですよ」
M「早まってるんですね!」
C「気持ち早まってる気がして。だけど花市場で4時にその場にいなきゃいけないってことは、僕2時半くらいに起きないと着けないんですよね(※CHAJINさんは鎌倉から東京の花市場に仕入れに行かれています~)」
M「そうですよね」
C「なので命との天秤が大変だよね(苦笑)」
M「確かに、睡眠をちゃんととりつつ……難しいですね」
C「だからみんなのんびり行こうよって思ってるんですけど、なかなかそうもいかないからって感じですかね~」
M「結構熾烈な争い……! お疲れさまです!」
C「いえいえ(笑)。でもそのうち7月も中旬とかに差し掛かってくると、おそらくは(ブラックベリーの)熟したものも出荷されてちょっとは増えてくると思うので」
M「ほぉほぉ」
C「この収録の時点では七夕だけど、アップされるころは結構売ってるじゃん!ってことになってるかもしれませんね(笑)」
M「あぁ(笑)」
C「ちなみに(今回使ったのは)ブルーベリーとブラックベリーと、あと、このホワホワ垂れてるのはオーストラリアン・ローズマリっていう、ちょっと繊細なローズマリーで」
M「普通のローズマリーよりも柔らかい感じですね」
C「そうそう。普通のローズマリーでも、すごくゴツくて直線のヤツもあれば、匍匐(ほふく)って言ってちょっと蛇行したクネクネしたものもあったりといろいろあるんですけど。このオーストラリアン・ローズマリーはそもそもが線が細いヤツで。鉢物なんかもよく出てます」
M「すごいカワイイと思います」
C「この写真みたいにちょっと枝垂れてるとか、柔らかいラインを欲してたら、あんまり骨太のローズマリーだとこういう空気感が出せないから」
M「ふんふん」
C「自分が目指したいところとか、あとは今回に限りませんけど、飾り場所との空気感とかTPOとか、そういうのに合わせて花選びを考えるんであれば、ローズマリーひとつとっても空気感が違うので、それをどうしようかなって考えるのが活ける前の楽しみかもしれません」
M「確かに、どこに飾るかによって結構変わりますもんね」
C「段々花活けに慣れてくると、活けることに余裕ができた分、そういう飾りどころとかにも気持ちがいくようになるので、ちょっと楽しさが深まりますよね」
M「なるほどです! あと、ほかにもなにか入ってますか?」
C「この葉っぱは、ブルーベリーの葉っぱなんです」
M「そうなんですね!」
C「量がそこそこあるのでボリューミーに見えますけど、花材自体はわりとシンプルな構成です」
M「この後ろの方の濃いめの葉っぱも、ブルーベリーですか?」
C「そうですね。ブルーベリーって実に目がいきがちですけど、わりと量があって彩りのいいグリーンの葉っぱもついているので、その葉っぱと実をベースにしながら違うモノを混ぜるとそんなにたくさん(花材を)買わないでも」
M「絵になりますよね」
C「これ大きさはね、すごい大きいというわけではなくて。この黒い器は大きめのジャムの瓶くらいって……よくわからないですよね(苦笑)」
M「(笑)。マグカップくらいとか?」
C「そうですね、そういえばよかったですね(苦笑)。ちょっと大きめのマグカップ、そんな感じ」
M「おうちに飾るならちょうどいい大きさかも」
C「そうかもしれないね。だから(花材の)種類は少なくても、ブラックベリーに黒があったり赤があったり、ブルーベリーもまだ熟していない緑があったり少し熟しているブルーベリー色があったり、ひとつの花材の中でも彩りがあるようなものを組み合わせると華やかさは出るかもしれませんね」
M「なんか3種類だけには見えない。もっと入っているのかなって思っていたので、意外でした!」
C「一応ベリー尽くしっていうテーマでもあるけど、違う括りでいうとどれもハーブの仲間っていう言い方もできるので、ハーブ尽くしっていうのも重複してテーマとしてはありますね」
M「ほぉ~」
C「ちょうどこれから夏に差し掛かって、なんとなくハーバルなものが市場とか花屋さんとかでも印象としては強めな季節になってくるので」
M「いいですねハーブ、爽やか! ローズマリーも揉んでいい香り……みたいな」
C「そうそう、写真だとわからないけどローズマリーの香りも加味されると、視覚的には実の彩り、嗅覚的には香りもあって、やっぱり五感で楽しむものなので。そういうと暑さも多少忘れさせてくれるかなっていう」
M「そうですね、確かに!」
C「これ以外にもこの時期にハーブと名のつくものがいろいろあるので、夏の花飾りのメニューとしてはありかも。たとえばバラとかもハーブの括りの中に……ローズヒップティーとかありますよね」
M「あぁ! ありますね!」
C「なにも葉っぱだけがハーブじゃないので、そういういろんな花もののハーブなんかの組み合わせで考えると、いつも見ているバラもちょっと違った見え方になるとか」
M「おぉ~」
C「あと、たとえばウイキョウっていう黄色い花っぽいものも、ウイキョウって聞くと胃薬を思い出す人も……僕なんか年齢的にウイキョウ=胃薬みたいに直結しちゃうけど(笑)、フェンネルっていう言い方もあるので。そうするとハーブって感じですよね」
M「なるほど~~~」
C「そうやって自分なりの花揃えのテーマを考えるところから入っていくのも、楽しいかもしれませんよね」
M「いいですね、自分だけの裏テーマじゃないですけど、ハーブで揃えちゃおうみたいな」
C「最初は活けることに四苦八苦しているかもですけど、段々それに慣れたときに、そういう余白の部分で精神的な部分に気付いたり。そうやってドンドン花の奥の方にいけるので!」
M「より深みに!」
夏にハーブ活け、爽やかそうでいいですね~!
ハーブは香りも清々しいので
一石二鳥なお得もたまりません。
ちなみに、取材日の7月7日はCHAJINさんの独立記念日でした!
平成7年の7月7日という
スリーセブンの日に独立されたそうです。
修業時代を入れると、花の道に入られて30年とか。
ひとつのコトを長く続けられる方は本当にスゴい。
尊敬です……!(byM)
鎌倉と、
パフェ萌
コロナ禍につい食べ過ぎてしまい、気がつけばヘビー級になってしまった我身。主治医から減量を言い渡されてはいるものの、
季節毎にお披露目される友人カフェの大人気パフェだけは例外!
今の季節は店名のカフェディモンシュを模したパフェレモンシュ(“れもん”の冠も素敵!)。
来鎌の際は、ぜひ食していただきたいチャンピオンパフェです。
https://www.instagram.com/cvdimanche/?hl=ja
ときどき茶話、
大大感謝
平成七年の七夕にオリジナルフラワースタイルCHAJINの屋号で独立して、はや四半世紀。
25周年の日、
カミさんがアトリエシェアメイトの御菓子工房のみんなに、
内緒でオーダーしてくれた初代IWGPチャンピョンベルト級の特大クッキー。
高校時代の親友からのサプライズ超高級紅茶ギフト。
他にもたくさんの嬉しい御言葉をかけていただき忘れられない良き日となりました。
花が繋いでくれたたくさんの御縁により
今も花活けをさせていただくことができる状況にあらためて感謝を覚えた日。
プロフィール
CHAJIN/チャジン
フラワーアーティスト。
ORIGINAL FLOWER STYLE CHAJIN 主宰。
暮らしまわりの雑貨と季節の花を合わせ、個性的でありながらもカジュアルな花あしらい、存在感あるリースの作品が得意技。
雑誌や広告の花活け、店舗や温泉宿のディスプレイ、展示会の花活けの他、
鎌倉のアトリエや、池袋コミュニティカレッジ、NHKカルチャー青山教室、NHKカルチャー横浜ランドマーク教室、二子玉川高島屋S.C教室ほか、都内各所で開催中の花教室も人気。
著書に『きょうの花活け』(誠文堂新光社刊)、『花活けのココロ』(主婦と生活社刊)、
『小さな花あしらいと12ヶ月の花の話』、『季節の花でつくる12ヶ月のリース』(ともに芸文社刊)がある。
紅茶好きでプロレス好きで愛猫家。鎌倉在住。
インスタグラム instagram.com/chajin_eye
脱線しまくり!?「花と」のところでおしゃべりしているCHAJINさんと、編集者Mとの花トークラジオ「活けラジ」やってます。
「迷わず活けよ、活ければわかるさ!」新エピソード配信中! vol.1から聴きたい、という人はこちら
これまでのお話はこちら
- すてき 1
- クリップ
この記事のライター
植物生活編集部
「植物生活」とは花や植物を中心とした情報をお届けするメディアです。 「NOTHING BUT FLOWERS」をコンセプトに専門的な花や植物の育てかた、飾り方、フラワーアート情報、園芸情報、アレンジメント、おすすめ花屋さん情報などを発信します。