植物生活編集部 植物生活編集部 33ヶ月前

一歩深く知っておきたいフラワーベースのはなし





「お花屋さんをもっとラクに、もっと楽しく」をコンセプトに、使いやすいプラスチックベースを提供しているフラワーベース社の器。

今回は、同社の環境に配慮した活動についてご紹介します。
 

廃棄リスクを減らす「花器」生産を追求して

アレンジメントによく使われるプラスチックのフラワーベース。
価格、デザイン、サイズなどそれらを選ぶ基準はさまざまあるが、そこにもう一つ加えるとしたら、たとえば“環境配慮”な視点を候補にするのはどうだろう。

近年、エシカル ーー 倫理や道徳に基づいた消費行動が注目されていて、購入する商品にその基準を求める消費者も増えつつある。
それは無視できない流れで、逆にそこを押さえていればある種の強みにもなる。

岐阜県山県市に拠点と本工場を置く「株式会社フラワーベース」は、プラスチック製フラワーベースを専門に作る企業だ。2013年の設立だが、母体となる会社は50年以上前からプラスチック製品を扱ってきた歴史と経験を持つ。



株式会社フラワーベースの岐阜県本工場。そのほかの協力工場もすべて国内にあり、国際情勢や為替変動による影響を受けづらく安定した価格と供給が保たれている



整然とした工場内。そこはかとなく創業50年以上の月日の気配が漂う


同社設立のきっかけも、母体となる会社で花屋さんの要望から新しい商品開発をしたことだったそうだ。
だからこそ花店での使い勝手にはこだわりがある。

毎日たくさん使える安くていいもの、使いやすいものを提供したい。
その思いからデザイン性・バリエーションの豊富さに加えて、廉価であること、小ロットから購入できること、重ねて収納でき省スペースなこと、さらには割れないように肉厚の構造になっているのもこだわりの一つだ。

肉厚で丈夫に作ることで長く使え、それが廃棄のリスクと機会を減らすことにもつながる。

さらに着目したいのが、同社では原材料を無駄にしない取り組みがなされている点だ。
製造の過程でどうしても発生してしまう端材や商品として出すには難しい不良品は、廃棄されるのが常だというが、同社ではそれを粉砕機にかけ粉々にし、もう一度溶かして再利用している。



次々と商品が作られていく



製造過程で出た端材や不良品



粉砕機にかけて細かく粒状にして再利用


「製造過程で出た廃棄物は、実はお金をかけて業者に引き取ってもらった方が安くつくんです。再利用するためには時間と人手がかかりますし」と代表取締役の服部健夫さんは言う。


では、どうしてわざわざ手間隙とコストをかけて再利用に取り組むのか。

「ビジネスとして考えたら処分した方がいいですよね。僕は会社の2代目なんですが、もともと社風として“材料は米粒と思って大事にしましょう”というのがあったんです。これを大っぴらに言うと宣伝ぽくってちょっと恥ずかしいのですが……でも、自分たちからしたら昔からしている当たり前のことなんです」



これが製造過程で出る端材や不良品を粉砕したリサイクル原材料。
これを溶かして再び新しい商品が生まれる。
このリサイクル原材料の姿はまさに「材料は米粒と思って大事に」の理念を彷彿とさせる。

服部さんの言葉からはビジネスとして利益を追求するだけではない、長年培ってきた素材を尊重する姿勢があり、モノづくりへの矜恃が感じられる。
こうした考えや背景はエシカルな消費から遠くないように思える。
扱う商品自体が花店のポリシーを代弁することにもなりうる。そう考えるとフラワーベースに対してもう一歩深く知り、選ぶことは、自身の考えを体現するひとつの手段かもしれない。
 

「花器」を作りたいワケ


母体が50年以上前からプラスチック製品を扱ってきた歴史と経験を持つ「株式会社フラワーベース」。
花器を作るきっかけは、もともと作っていたプラスチックの植木鉢を、ある花屋さんが毎月大量に注文してくれたことだった。

どうして毎月そんなに需要があるのか。
その花屋さんに電話をして聞いたところ、葬儀用お供え用の花器として使っているという。ただ、植木鉢なので底に排水用の穴が開いているため、セロファンを敷いて水漏れしないようにしてから使用しているとのことだった。

それを聞いた服部さんは、もし穴のない植木鉢を作ったらどうだろうと提案すると、欲しいという答え。

そこで実際に制作・販売したところその花屋さんのある地域で非常によく売れた。
これは全国的に需要があると感じ、全国に展開したが、当初は知名度もなくあまり売れなかったという。

同社では“営業をしないで売る”のが基本的なスタイルだ。理由は、営業コストをかけないことで、商品をより安く提供できるから。

商品には自信がある。

少しずつ地道にPRを重ねてその良さを広めてきた。

「毎日大量に使うから安くていいもの、使いやすいものを提供しようと思っています」とは服部さんの言だ。


服部さんは、この業界に入ってから花屋さんの知り合いが増えた。

「実は花屋さんがすごく好きで。花屋さんって花を扱いますよね。花を扱いながら“花っていいな”っていう人が多い。自分の職業をそんなに“いいな”っていう花屋さんの気質がすごく好きなんです。十把一絡げにどの花屋さんもそうだとは言えませんが、忙しくても花っていいなと言う、そんな職業の人たちがすごく素敵だなと思います。それが、僕自身がフラワーベースにのめり込んだ理由でもあります」



本社のそばには川が流れ、美しい自然が広がっている。ここから今日も、たくさんの花器が花屋さんの元へ旅立っていく。


株式会社フラワーベース
http://www.flowervase.biz/

フラワーベース社の商品を使った作例のこれまでの連載はこちらから


 
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