【週のまんなか、読みたい本】福山知佐子画集『花裂ける、廃絵逆めぐり』
なにげなく手に取ったが最後、剥き出しの花の渦に飲み込まれる
私は植物をどのように見ているのだろうか?
花を活け、写真を撮り、どの角度が一番美しいか……などと考えながら活け直す。
その後、枯れてきたら、捨てる。
それが繰り返される。
この本を読了したとき、(正確には画集なので見終わったというのが正しいのかもしれませんが)最初に思ったのはそんな、自分が植物に対して日頃どういった態度でいるか?ということでした。
この本を手に取ると
まず目を奪われるのは、あらゆる角度からデッサンされたおびただしい数の花の数々。
ページをめくっていくと、それらが大きな塊となって目前に押し寄せてきます。
その中でも、
鉛筆デッサンに少し着彩された作品に心が奪われました。
植物に携わるものとして「生き生きとした新鮮な」ものを良しとされていることが常識であると無識的に感じていますが、この本をめくっていくと、そんな概念もだんだんと薄くなっていく感覚に陥ります。
これから咲くのか、朽ちていくのかわからないけども、ねじれ、裏を向き、色も完全であったり、完全でなかったり。
ずっと、ひたすらに植物を見ている人しか味わうことのできない表現が、ただただ圧倒される数掲載されています。
植物を見つめ、描く。
その迫力に花を扱う人ならば、様々なインスピレーションを受けるに違いありません。
あらたな花の魅力に気づかされる1冊です。
書籍特設サイトはこちら >> 福山知佐子画集『花裂ける、廃絵逆めぐり』
Information
「花裂ける、廃絵逆めぐり」福山知佐子 著
水声社
http://www.suiseisha.net/
仕様:B5判上製、192頁(内カラー48頁)
定価:3,500円+税
ISBN978-4-8010-0598-3
【内容】
花とは何か? 花は、生けるものが世界に向けてかくも開かれてあるところ、生けるものが我を忘れているところにある。 ――ジョルジョ・アガンベン
巻頭文「花――福山知佐子の絵画のために」より
枯れゆくチューリップ、しなだれ、衰微するアネモネ…。枯れながら命を終えてゆく植物たち、そしてそこに潜む生命の循環を描いた、鉛筆による素描、水彩、銀箔膠絵。20年以上にわたり、花開き、枯れ、朽ちはてる草花を描き続けた画家の集大成。
テクスト寄稿=ジョルジョ・アガンベン、水沢勉、鵜飼哲、鈴木創士
【著者紹介】
福山知佐子(ふくやまちさこ)
東京・新宿に生まれる。日本画家・毛利武彦に師事。
著書に『反絵、触れる、けだもののフラボン』(水声社、2012年)がある。
監著に『デッサンの基本』(アトリエ・ハイデ編、ナツメ社、2009年)。
詩集や評論集の装丁・装画なども多く手がける。
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この記事のライター
植物生活編集部
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