むずかしすぎる本に挑戦! 植物マニアになるためのこだわりの本[02]
明治生まれの文豪と植物との熱くて深い関係
泉鏡花に森鴎外、夏目漱石、室生犀星。
本を読まない人でも名前くらいは聞いたことがある、超有名な明治生まれの文豪たち。
文学を愛する彼らは同時に、花々をも愛でる哲人でありました。
小説の中に描写される花、あるいはその私生活においての花々との関わりなどが垣間見られる評論と
文豪自身のエッセーをご紹介します。
泉鏡花 ー百合と宝珠の文学史
匂いたつ夢幻の森をゆく 指環、花、飴、くだもの、雛、汽車、骨……
作品にちりばめられた多彩なイメージを手がかりとして、
神秘的な鏡花の物語世界をひもといてゆく、珠玉の評論です。
本の中では、鏡花の作品を内外の作家の作品と比較・対照して論じていますが、
登場するのは国内では、
露伴、逍遥、紅葉、荷風、三島由紀夫、
海外では『吸血鬼ドラキュラ』のブラム・ストーカー、
『青い花』のノヴァーリス、『石の花』のバジョーフ、『ファールンの鉱山』のホフマンなどといった文学界の大御所たち。
著者曰く、
「管見のかぎり、こんなに情感をこめてていねいに花屋の描かれる光景の数ページ、日本近代小説ではまれである。」
「庭や野に咲く自然の花々の風情を愛でる作家は珍しくないが、「野の花の清楚、山の花の神秘も愛するけれど、新しくかわいい洋花もおおいに好きである。」作家は少ない。「鏡花ほど装飾的に花を愛し、その作品空間を花で埋め尽くすような姿勢は、日本近代文学においてやはり稀有なのだ。」
冒頭のカラー口絵では、鏡花の著作本の表紙・口絵・挿絵として用いられた日本画家、
鏑木清方と小村雪岱の作品を紹介しています。
鴎外の花暦
全集はもちろん、関連本や研究論文、雑誌記事などにもほとんど登場しない『花暦』を植物のカラー写真とともに解明。
「第二章 日記の中の花暦」、「第三章 鷗外のガーデニング」で、明治~大正期に人気のあった花やその名前など、
およそ100年前のガーデニングの実情が明かされているのが興味深い!
これまでほとんど触れられてこなかった文豪の意外な一面が見える一冊です。
漱石と植物
自然に深く傾倒し、植物を熱愛した漱石。
彼の植物観を、小説『草枕』と小品『思ひ出す事など』を元に探ります。
「春秋の植物が明暗の心境を対照させる両作品から始め、そこに漏れる分を補いながら」論考が進んでいきます。
庭をつくる人
昭和の文豪・犀星の多彩なジャンルの文業を一冊に収録しました。
庭、陶器について、俳道、魚民洞雑記、小篇四種、花と茶、人物評論、魚鳥昆虫、小品集、発句、少年時代の文章、映画小感、日録、の13章で構成されています。
昭和2年6月刊行の初版本が、初めて文庫版で復刊。
犀星文学の入門書、再発見の書として最適!
「花と茶」の章は必読です。
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この記事のライター
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