植物生活編集部 植物生活編集部 60ヶ月前

学ぼう、花のスペシャリストに。水揚げ&花のケア vol.4|水揚げの基本「ミョウバン・水揚げ材・ハッカ油」

花を長持ちさせるには、花それぞれの特性を知った水揚げや花のケアが必要です。
でも、どうやっていいかわからない。
プロになりたい人、いまさら聞けない人、もっともっと花を楽しみたい人まで、
基本から学んじゃいましょう。


花を長持ちさせるためのテクニックや知識を、実際のお花屋さんの業務の中で研究し、検証してきた
フルーロン花佳の薄木健友さんに学びます。


vol.4 正しい水揚げの基本その4 「 ミョウバン・水揚げ材・ハッカ油など」


第一回目は水切りの基本を、
第二回目は湯揚げの方法をお伝えしました。
第三回目は茎を割る、裂く方法をお伝えしました。

今回は、 ミョウバン・水揚げ材・ハッカ油などを使う方法をお伝えします。

 

裏技のようで実は科学的なミョウバン


私たち日本人にとっては、昔から食品添加物として身近にあったミョウバン。
花店でも古くから水揚げに使われてきました。

このミョウバンの正式名は硫酸カリウムアルミニウム十二水和物。
つまり、品質保持剤などにも使われている抗菌剤のひとつなのです。
このミョウバンを切り口に付けることで灰汁が抜け、維管束内の水の通りが非常に良くなります。
さらにバクテリアの繁殖も抑えられるため、すみやかに水揚げができ、その後も水が下がりにくいのだと考えられます。


水揚げ方法

 



1. 斜めにカットした切り口から白い繊維質を取り除き、外皮の樹皮を剥く。
茎をナイフで斜めにカットし、アジサイの場合は中心部の白い綿部分を取り除きます。これは水の浸透を早めるためと、バクテリアを付着しにくくするためです。




2. ミョウバンを切り口にすり込む。
切断面に粉状にしたミョウバンを、茎の断面をつぶさない程度にすり込みます。もし水下がりが激しい状態なら、切り口から数cmほど表皮を剥いて導管を出すとさらに水上がりが良くなります。ミョウバンは糖分を含んでいないので、切花栄養剤を併用すると発色も良くなり花持ちも長くなります。

適する花材
アジサイなどの枝物
ビバーナム、スモークツリー、ガーベラなど

POINT
導管をむき出しにする。

 

市販の水揚げ剤を使う

 



切り花の専用水揚げ剤が市販されています。
水が上がる理由は、主に界面活性剤の働きによるものと思われます。
界面活性剤には、水の表面張力を下げ、水が動きやすくなるという効果があります。


水揚げ方法

1. 花や葉を新聞などで巻いて、茎を斜めに空切りする。
2. 水揚げ剤に規定時間浸ける。
3. すばやく水に生ける。

POINT
薬剤が皮膚に付着しないよう注意。

 

ハッカ油、酢、木酢液、アルコール(ウイスキーなど)を使う




これらの液体に共通するのは、除菌効果と蒸散を促す作用です。
しかし、科学的に考えればこれらは揮発性が高く、導管内に余分な空気を押し込んでしまう可能性もあり、少し疑問を持つ部分もあります。
ですから、主に除菌作用により水が下がりにくくなる点に効果があると考えられます。


水揚げ方法

1. 花や葉を新聞などで巻いて茎を斜めに空切りする。
2. それぞれの液体に数秒浸ける。
3. すばやく深水に生ける。

適する花材 
クチナシ、ジャスミン、ダスティミラー、ナルコランなど

POINT
湯揚げや焼き揚げができない、火を使えない場所で便利。

次回からは具体的な品目別のおすすめの水揚げ方法をご紹介します。
>>「アジサイ」おすすめの水揚げ法


教えてくれたお花屋さん
薄木健友 Taketomo Usuki
札幌の生花店株式会社花佳代表取締役。NPO 法人日本切花装飾普及協会認定カットフラワーアドバイザー。 第1回花のMVP大賞受賞。1988 年札幌市内の生花店に勤務したのち、1993年にフルーロン花佳を開いて独立。JFTD学園講師、切り花の水揚げと鮮度管理に関する講演や雑誌連載など、活動は多岐に渡る。

フルーロン花佳
北海道札幌市西区西野6条3丁目 1 - 1
http://www.hanaka.tv
E-mail:hana@hanaka.tv


もっと詳しく知りたい!「花の扱いのプロになりたい」という人は薄木さんの著書『水揚げ&花のケア 切り花の鮮度保持マニュアル』をご覧ください。

薄木さんの言葉:
家電販売業界から花屋に転向した私は、バラとカーネーションの違 いすらわからない、まったくの素人でした。

先輩たちから花の名前を 教わり、アレンジや花束、葬儀スタンド、祭壇、ブライダルブーケな どひととおりの技術を教わったのですが、ひとつどうしても納得のい かない技術がありました。
それが水揚げです。

キクは湯揚げして!ススキは酢に浸けて!アジサイはミョウバンをすり込んで!どの作業にも驚きましたが、それ以上に「なぜ?」という疑問を持ちました。

先輩たちに質問しても、「水が上がるから」と言われるだけ。
納得できる解答は得られませんでした。
独立後、ほかの花屋さんと交流するようになり、お店によって水揚げ方法が違うことを知り、私の疑問はさらにふくらみました。

いったいどの方法が正解なのか?
そこから 私の水揚げと管理についての模索が始まったのです。
その模索から得たことを、2008年から2年間、雑誌『フローリスト』にて連載させていただきました。

本書はその内容をさらにわかりやすくまとめたものです。

花によって、適する温度や湿度、そして水も違います。
エチレンガスの影響を受けやすい花、バクテリアの影響を受けやすい花など、性質はさまざまです。

それらの管理方法についても具体的に説明しています。
水揚げにはいくつもの方法があり、しっかりと水が上がればその方法は正しかったと言えます。
本書でご紹介するやり方が必ずしもすべ てとは言えません。
あくまでも数ある方法のひとつとして参考にして いただければ幸いです。



こちらの「植物生活ショップ」からご購入できます。
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「植物生活」とは花や植物を中心とした情報をお届けするメディアです。 「NOTHING BUT FLOWERS」をコンセプトに専門的な花や植物の育てかた、飾り方、フラワーアート情報、園芸情報、アレンジメント、おすすめ花屋さん情報などを発信します。

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